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山里亮太さん「天才はあきらめた」 執念も嫉妬も人生の肥やしに

山里亮太さん=篠田英美撮影

 「いかにサボらず、努力を続けるか」が芯にある。「24h笑いだ!!必死になれ!!」「陰口言ってる奴(やつ)らを恨む時間は死ぬ程ムダ!!あいつらのウイニングランになるだけ」と書き殴った自筆(悪筆)メモも掲載。「嫌な人や経験」=「自分を成長させるもの」という公式は画期的だ。本当は天才なのでは?
 思いついたネタや、つらかったことを長年書きためたノートは100冊近く。それを元につづった。12年前に出版した『天才になりたい』の文庫化だが、「ほぼ全てを書き直した」。前作は3万部足らず、今回は発売1カ月で7万部に。執念深さや自身の心の闇を隠さずに加筆したことが共感をよぶのだろう。
 「南海キャンディーズ」の相方、しずちゃんとのかつての確執は赤裸々だ。2004年のM―1グランプリでコンビが脚光を浴びた後、ネタ作りは自分が担当したのに、しずちゃんの方が引っ張りだこに。嫉妬から、漫才以外の仕事で忙しい相方に「大きい女の子あるあるを1日5個考えて」「旅行の間に他の女性芸人のネタDVDを見て勉強を」と矢継ぎ早に“宿題”を課した。映画「フラガール」の出演依頼もマネジャーを通じて断らせるよう画策。
 どう考えても山里さんが悪い。指摘すると「僕自身、それほど悪いと思っていなくて、出版後、みんなから『こんなに自分の醜いところを出して』と言われ、初めて気づいたんです……」と赤面した。一方で、当時は精神的に不安定でもあり「いつでも捨てられる準備を」「相方を見て知った、力のない人間が芸能人ぶることの愚かさを」とも書いていた。
 元来真面目で、自分にも厳しい。現在のお笑い界で一つの「型」になった、解説めいたツッコミの元祖だが、「しずちゃんのおかげ。彼女を生かすため生まれたスタイル」と殊勝だ。
 練ったネタのみならず、フリートークでも鋭い返しが光るが、「瞬時に複数の答えを用意し、何がベストか選択している。デビュー時から繰り返してきた練習の成果」。やはり努力の人なのか。人並み外れた執念深さと粘着性で人生を切りひらく姿勢は、まぶしくさえある。(文・後藤洋平、写真・篠田英美)=朝日新聞2018年8月25日掲載