藤巻忠俊「黒子のバスケ」(集英社、全30巻)
「漫画、大好きです!」と、はじけるような笑顔を見せる坂口佳穂さん。ビーチバレー界の新星として注目を集める彼女が紹介してくれたのは、弟たちと読んでいたという「黒子のバスケ」(作・藤巻忠俊)。
作品の主人公は誠凛高校のバスケ部、黒子テツヤ。影が薄く運動能力も人並み以下の彼は実は、全国大会で常勝を誇る帝光中学出身。10年に一人の天才が5人揃った「キセキの世代」の幻の6人目(シックスマン)だった。黒子は天賦の才能を持つ火神(かがみ)をはじめチームメイトとともに、かつての仲間たちがいる強豪と戦い、日本一を目指す――。
「弟が4人いてみんなバスケをやっていたのもあって、姉弟で『黒子のバスケ』が大好きなんです。『キセキの世代』の6人がみんな違う高校に行ってライバルになるっていう設定も面白いし、黒子が“影”で、火神が“光”として、お互いの力を引き出し合うのもいいですよね。あとなんといっても、よく考えたな~って感心するくらい全員キャラがたっていて、しかもみんなカッコイイ! 最高じゃないですか?」
たしかに『黒子のバスケ』はイケメン揃いで、女子人気も高い。坂口さんの“推し”は、「キセキの世代」のひとりである秀徳高校のシューター、緑間真太郎だ。
「私は断然、緑間っち(キセキの世代の黄瀬涼太がそう呼ぶ)です。彼はクールだけど誰よりも練習して『人事を尽くす』から、絶対にシュートを落とさない。その“人事”には、星占いを取り入れることも入っていて、試合会場にラッキーモチーフのクマのぬいぐるみとかを普通に持ってくるんです。超かわいいでしょ(笑)。クールな天才なのに占いを気にするなんて!と思って、大好きになりました。あと、『~~なのだよ』って、語尾が変なのもちょっと笑えてキュンときて。そういうギャップにやられちゃいました」
その緑間はコートのどこからでも決められる超ロングシュート、黒子は影の薄さと観察眼を生かした「見えない」パスやドライブなど、それぞれが“必殺技”を持っている。そこも坂口さんが「キャラ立ちがすごい」というゆえん。現実ではありえないようなスーパープレーが次々と出てくるのも『黒子のバスケ』の面白さのひとつだという。
「弟たちが黒子のパスを真似しようとして『できねー!』って騒いでましたけど(笑)、夢を見られるというか、現実離れした世界にワクワクできるのは漫画ならではですよね。でも、『黒子のバスケ』はそれだけじゃない。勝つために個人技優先だった『キセキの世代』が、負けを知ることで成長したりバスケがもっと好きになったりする。そういうリアルなシーンにぐっときますね。負けて初めてちゃんと自分と向き合えたり、課題が明確になったり、“負けから得る”感覚は私もよくわかるんです。私の場合はさんざん負けてきたので余計になんですけどね(笑)」
黒子のいる誠凛高校は、仲間との絆や信頼関係が大きな力になり、何度もピンチを切り抜け、勝利をつかみ取っていく。坂口さんが特に好きなシーンとして挙げたのが、ウインターカップの誠凛対桐皇戦。残り5秒で誠凛が1点ビハインドのラストプレー。
「黒子が火神にパスするときに『火神君なら最後に決めてくれる!』みたいなことを言って、火神はその思いに応えるようにダンクを決める。そもそも黒子が最後にルーズボールをとれたのは、昔の仲間である青峰(桐皇のエース。「キセキの世代」のひとり)の力を信じていたからでもあって、そういう流れも含めて鳥肌が立ちました。
個人技はもちろん重要だけど、やっぱり最後はチームワークですよね。仲間を信頼するからこそ成功するプレーもたくさんあること、スポーツはひとりじゃできないこと。それを『黒子のバスケ』は教えてくれます。スポーツ漫画って、ほんとにいいですよね! 『弱虫ペダル』も大好きなんですけど、これもアツいチームワークが描かれていておすすめです」
そんな坂口さんがいまハマっているのは、スポーツから一転、「キュンキュンできる」少女漫画だそう。もし少女漫画の主人公になれるなら、と聞いてみると。
「幼馴染の男子とすれ違う恋愛モノに出てみたいです。お互い好きなんだけど、素直になれなかったり邪魔が入ったり、なかなかくっつかなくて胸がむずがゆくなるような、定番の(笑)」
相手はやっぱり緑間っちみたいな人……?
「いいですね! 緑間っちはクールで素っ気ないから、本心がわからなくてヤキモキしそうですよね。で、たまに心を揺さぶられるようなことを言われて、あれはどういう意味? あの態度はまさか私のこと…好き? みたいな、ウキウキワクワクをやりたい。あはは。少女漫画はこういう妄想込みで楽しめるから好きなんです」