江戸時代、世界初の先物取引を始めたとされる大坂の米市場。先進的な市場で躍動する商人と、統制したい幕府とのせめぎ合いをまとめた「大坂堂島米市場(いちば)」(講談社現代新書、本体900円)を7月に刊行した。
堂島米市場では、米の現物取引ではなく、帳面上で米を売買する「帳合米(ちょうあいまい)取引」が生みだされ、本格的な先物市場が発展した。「世界的にもユニークな市場なのに、意外と知られていない。かつて輝いていた大坂をもう一度みたい、という思いも執筆の理由です」
大学で金融工学を学び、卒業後は一般企業に就職した。堂島米市場に興味を持ち、退職して経済史研究の道に進んだ。古文書もほとんど読めないまま、近江の農家に伝わる江戸時代の米相場帳の解読に挑み、約1年かけて大坂の米価推移の復元に成功。経済と歴史の両方の視点で江戸時代の金融技術が日本の近代化にどう影響したのかの解明を目指す。「今の市場経済の考え方は金科玉条ではない。相対化して見ることが出来るのが経済史の面白さ。その魅力が少しでも伝わればうれしい」(渡義人)=朝日新聞2018年9月5日掲載
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