邪馬台国とヤマト王権という二つの古代国家は、朱という鉱物の採掘と東アジアへの輸出によって繁栄した。そんな仮説を立て、深掘りしてみせたのが『邪馬台国は「朱の王国」だった』(蒲池明弘著、文春新書・950円)。「朱の交易が邪馬台国を盟主とする連合国家の最大のミッションであった」という記述は刺激的だ。
なぜ、朱なのか。天然の朱は赤色の塗料であり、薬品の素材で、防腐剤、防虫剤としても利用され、加熱すれば水銀を得ることもできるからだという。利用価値は大きく、珍重されたというのだ。
描かれるのは邪馬台国の時代から奈良時代までの2~8世紀。魏志倭人伝、古事記、日本書紀などを駆使して邪馬台国の実像を探り、朱によるビジネス、巨大古墳の造営バブルとの関連、なぜ伊勢に国家的な神社があるのかにまで話は広がる。
「仮説に基づく思考実験」なので内容に疑問を持つ向きもあるだろうが、私は「へえー」の連続だった。朱という視点から、古代に思いをはせるのも一興では。(西秀治)=朝日新聞2018年9月8日掲載
編集部一押し!
-
となりの乗客 手洗いとは岡山駅 津村記久子 津村記久子
-
-
作家の読書道 嶋津輝さんの読んできた本たち 高2の夏休み「華岡青洲の妻」で踏み入った有吉佐和子沼(前編) 瀧井朝世
-
-
杉江松恋「日出る処のニューヒット」 蝉谷めぐ実「見えるか保己一」 知の巨人・塙保己一を美化せず、等身大の人物として描いた傑作評伝(第37回) 杉江松恋
-
わたしの大切な本 映画監督・山中瑶子さんの大切な本 「未熟は普通」絶望から開けた道 堀越理菜
-
谷原書店 【谷原店長のオススメ】長瀬ほのか「わざわざ書くほどのことだ」 対照的なふたり、軽妙なエッセイに 谷原章介
-
コラム 文理の枠を超え、知性を楽しむ 人気連載「文系のための科学本ガイド」を読む 好書好日編集部
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社