邪馬台国とヤマト王権という二つの古代国家は、朱という鉱物の採掘と東アジアへの輸出によって繁栄した。そんな仮説を立て、深掘りしてみせたのが『邪馬台国は「朱の王国」だった』(蒲池明弘著、文春新書・950円)。「朱の交易が邪馬台国を盟主とする連合国家の最大のミッションであった」という記述は刺激的だ。
なぜ、朱なのか。天然の朱は赤色の塗料であり、薬品の素材で、防腐剤、防虫剤としても利用され、加熱すれば水銀を得ることもできるからだという。利用価値は大きく、珍重されたというのだ。
描かれるのは邪馬台国の時代から奈良時代までの2~8世紀。魏志倭人伝、古事記、日本書紀などを駆使して邪馬台国の実像を探り、朱によるビジネス、巨大古墳の造営バブルとの関連、なぜ伊勢に国家的な神社があるのかにまで話は広がる。
「仮説に基づく思考実験」なので内容に疑問を持つ向きもあるだろうが、私は「へえー」の連続だった。朱という視点から、古代に思いをはせるのも一興では。(西秀治)=朝日新聞2018年9月8日掲載
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