「あの小説をたべたい」は、好書好日編集部が小説に登場するごはんやおやつを料理し、食べることで、その物語のエッセンスを取り込み、小説の世界観を皆さんと共有する記録です。
もうすっかり秋めいてきましたが、今回は米澤穂信の「小市民」シリーズ第二弾『夏期限定トロピカルパフェ事件』の世界へ。
日々を平穏に過ごす“小市民”を目指している高校二年生の小鳩君と小佐内さん。互恵関係にある二人の関係は学校内に終始するものだったはずが、この夏は一味違うよう。
夏休み、小佐内さんから〈小佐内スイーツセレクション・夏〉なるものを手渡された小鳩君は、なぜか彼女とスイーツ巡りをすることになります。着々とスイーツを攻略していく二人ですが、ある日、小佐内さんが誘拐されてしまい……。
美味しそうなスイーツと思春期ならではの自意識過剰っぷりが楽しめる、甘酸っぱい青春ミステリーです。
「トロピカル」を食べる
物語のカギを握る〈小佐内スイーツセレクション・夏〉で栄えある第一位に輝いたのは、〈セシリア〉の夏期限定トロピカルパフェ。
高さ30センチほどの迫力満点なパフェを目の前に、小鳩君は思いました。
このパフェのおいしさはフルーツのおいしさとほとんど等価なんじゃないだろうか。
ということは、おいしいフルーツがあれば家庭でもこれは作れてしまうんじゃないだろうか。
というわけで、作ってみました、夏期限定トロピカルパフェ。
スイカにモモ、パイナップルなど夏の果実をふんだんに使い、トロピカルを意識してみました。
ひとくち食べてみると、小鳩君が思ったとおり、「パフェのおいしさ=フルーツのおいしさ」でした。
きっと別々で食べてもおいしいのでしょうが、一度にこれだけの種類のフルーツを食べるということに、どうやらこのパフェの存在意義があるようです。