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「ネルソン・マンデラ その世界と魂の記録」書評 南アフリカの英雄の記録

評者: 諸田玲子 / 朝⽇新聞掲載:2018年11月17日
ネルソン・マンデラ その世界と魂の記録 著者:ロジャー・フリードマン 出版社:西村書店 ジャンル:伝記

ISBN: 9784890137930
発売⽇: 2018/10/31
サイズ: 27cm/304p

ネルソン・マンデラ その世界と魂の記録 [写真]ベニー・グール、[著]ロジャー・フリードマン

 世界中でヘイト・クライムが多発している。何世紀ものあいだ人々が闘いつづけてようやく手にした(真の意味ではいまだに不完全で危うさをはらんでいるとしても)自由や平等そして「寛容」はもう机上の空論と化してしまったのか。南アフリカ共和国をおぞましいアパルトヘイトから解放した英雄、ネルソン・マンデラは二度と現れないのか。
 生誕百年を記念して刊行された本書をどこかで目にしたら、ぜひとも一読してほしい。多彩な写真と共に刻まれた彼の人生を、言葉の数々を、今こそ私たちはふりかえるべきだろう。
 「終わりに」の一カ所を引用させていただく。「マンデラの仕事は、南アフリカを深い奈落の底から救い出すことだった。彼がよりどころとした武器は、彼を捕らえた者たちが取り上げることのできなかった、人間性、思いやり、倫理、信念、公正さなどだった」
 あともどりをしてはいけない。流された多くの血と涙のためにも。