読んでいて、清らかな風を感じた。中学3年生の鈴木るりかさんの連作短編集『14歳、明日の時間割』(小学館・1404円)。1時間目の国語に始まって、家庭科、数学、道徳、昼休み、体育、放課後と続く物語は、次々と登場する中学生たちのみずみずしい感性に満ちている。
体育の時間。「世の中にたえて体育のなかりせばわれの心はのどけからまし」と詠む主人公の星野茜は、速く走るという「プレミアオプション機能」がついていない女の子だ。余命いくばくもない祖父の回復を願って、マラソン大会での完走を決意する。祖父の「どんな姿になっても、命の砂時計の最後のひと粒が落ちきる瞬間までは生きているんだよ」という言葉と、茜の頑張りが響き合う。
こんな独白が出てくる。「大人から見たら、くだらない、取るに足らない悩みって思うかもしれない。でも今私たちを悩ませて、思考のほぼ大半を占める問題は、そんなのばかり」。身に覚えがある。でも、そんな自分を懐かしむ日がきっと来る。(西秀治)=朝日新聞2018年12月8日掲載
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