読んでいて、清らかな風を感じた。中学3年生の鈴木るりかさんの連作短編集『14歳、明日の時間割』(小学館・1404円)。1時間目の国語に始まって、家庭科、数学、道徳、昼休み、体育、放課後と続く物語は、次々と登場する中学生たちのみずみずしい感性に満ちている。
体育の時間。「世の中にたえて体育のなかりせばわれの心はのどけからまし」と詠む主人公の星野茜は、速く走るという「プレミアオプション機能」がついていない女の子だ。余命いくばくもない祖父の回復を願って、マラソン大会での完走を決意する。祖父の「どんな姿になっても、命の砂時計の最後のひと粒が落ちきる瞬間までは生きているんだよ」という言葉と、茜の頑張りが響き合う。
こんな独白が出てくる。「大人から見たら、くだらない、取るに足らない悩みって思うかもしれない。でも今私たちを悩ませて、思考のほぼ大半を占める問題は、そんなのばかり」。身に覚えがある。でも、そんな自分を懐かしむ日がきっと来る。(西秀治)=朝日新聞2018年12月8日掲載
編集部一押し!
-
インタビュー 川上弘美さん「スナックふたり」 年配女性のバディもの「やっと書けた」 朝日新聞文化部
-
-
小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 文學界新人賞・村司侑さん 先に小説家になった妻に嫉妬。自己憐憫をやめたら書けた「ソリティアおじさんがいた頃」#39 清繭子
-
-
新作映画、もっと楽しむ 映画「キングダム 魂の決戦」小栗旬さんインタビュー 天才軍師の背負うものとは 根津香菜子
-
本好きのための職業図鑑 鈴木のりたけさんが語る職業としての絵本作家 思い浮かべた世界 表現する喜び 加治佐志津
-
コラム アメリカ・政治と戦争 さまよえる超大国のゆくえ 【じんぶん堂注目記事セレクト】 加賀直樹
-
本屋は生きている 甲羅文庫(千葉) 「しょんぼりしたままでもいい」 社労士×古本屋店主が目指す、無理に前向きにならなくてもいい居場所 朴順梨
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版