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「劇しい處」に身を置いた演劇人  「維新派・松本雄吉」

 劇団「維新派」は、大阪を拠点に、巨大な舞台装置を用いる野外劇で知られた。主宰・松本雄吉が没して2年が過ぎ、初めての著作集『維新派・松本雄吉 1946~1970~2016』(リトルモア・4968円)が刊行された。過激なパフォーマンスを展開した70年代の日記、麿赤兒らとの対談や演出ノートなどを収める320ページの大部。資料としての貴重性だけでなく紙や書体にこだわった造本は、編集に携わった関係者らの思い入れを感じさせる。
 「身体は風景に巻き添えに石を置くが如(ごと)く横たえよ」「私達(たち)の劇(はげ)しさのよりどころを全て、劇場という現場に露(あら)わにしたいと思うのだ」。数々の言葉と、巻末の充実した略年譜が改めて示すのは、演劇界における、その傑出したオリジナリティーだ。
 表紙の写真は11年、岡山市・犬島で「風景画」を上演した際のリハーサルの一コマという。雄大な風景と相対する松本の後ろ姿に、生涯「劇しい處(ところ)」に身を起き続けた人の凄(すご)みと優しさがにじんでいる。(増田愛子)=朝日新聞2018年12月15日掲載