徳川将軍家はどのようにお正月を迎えていたのだろう――。東京・両国の江戸東京博物館で開催中の「春を寿(ことほ)ぐ」展は、徳川記念財団が所蔵する約120点に及ぶ伝来品を通し、睦月(むつき)、如月(きさらぎ)、弥生という、年頭3カ月の将軍家の行事をたどる展覧会だ。
会場を彩るのは、「百人一首かるた」「謡曲かるた」「伊勢物語歌かるた」といった多彩なかるた群のほか、薩摩の島津家から13代将軍家定に嫁いだ篤姫(あつひめ)(天璋院〈てんしょういん〉)が使った蒔絵(まきえ)の雛道具(ひなどうぐ)や刺繍(ししゅう)が見事な掛袱紗(かけふくさ)、梅に心寄せる若武者をほうふつさせる宗家伝来の「銀細工 兜(かぶと)に梅の花一枝(いっし)」など。
一品一品に歴史が凝縮されているのはもちろんだが、元日に将軍と近親者が拝む「東照宮御影(みえい)」や、歴代将軍の手になる書画などを眺めていると、「武家のみやび」を極めた、在りし日の将軍家の営みが目に浮かんでくる。
3月3日まで。28日、2月4日、12日、18日、25日休み。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2019年1月16日掲載