『福岡市を経営する』 [著]高島宗一郎
近年、福岡市は「もっとも活気あふれる街」と評されているという。人口増加率は政令指定都市トップ。クルーズ船などの誘致が奏功し、税収も5年連続で過去最高を更新と、威勢のいい数字が並ぶ。
その発展を牽引(けんいん)するのが、2010年末、36歳の若さで市長に就任した著者である。博多駅前の道路陥没を驚くべき速さで復旧させ、ダボス会議にも招待されるなど、国内外で注目を集めている。
とはいえ、就任当初、行政経験のない元アナウンサーに周囲は懐疑的だったという。強烈な逆風のなか、果敢に改革を推し進め、実績を積み上げ……。本書は、そんな8年間の苦闘の記録である。
福岡を「アジアのリーダー都市」にするべく注力したのが起業支援だ。画期的な新製品やサービスがあっても、法や規制に阻まれれば事業として成立しない。そこで国家戦略特区を活用して規制緩和を敢行したのだ。「政治とスタートアップが組んだとき、はじめて社会が変わる」との持論には説得力がある。
大きな成果は、街の空気を変えたことか。政治家らしいアピールも目につくが、年初に読むにふさわしい前向きな書。悲観はやめ、攻めの姿勢で新時代の扉を開けと促す。=朝日新聞2019年1月19日掲載