「あの小説をたべたい」は、好書好日編集部が小説に登場するごはんやおやつを料理し、食べることで、その物語のエッセンスを取り込み、小説の世界観を皆さんと共有する記録です。
今回味わうのは、柴咲コウさん主演で映画化もされた小川糸『食堂かたつむり』。
同棲していた恋人にぬか床以外のすべてを持ち去られ、その衝撃で声をも失ってしまった主人公の倫子。ふるさとに戻り、メニューのない小さな食堂を始め、一日一組のお客様との出会いを通じて倫子の心は少しずつときほぐされていきます。
さまざまな料理が登場する小説ですが、今回は身も心もあたたまる季節野菜のスープ、別名「ジュテームスープ」に挑戦しました。
「恋のはじまり」を食べる
高校生の桃ちゃんから、意中のサトル君と両想いにしてほしいとお願いされ、スープをつくることにした倫子。
私は、厨房にある野菜の中から次々と選んでそれらを細かく刻み、火の通りにくいものから順にバターで炒めた。
季節野菜ということで、白菜、カブ、セロリ、ネギなど、冬に美味しい野菜を中心に選んでみました。
恋に余計な小道具は必要ないと思い、味付けは塩だけにした。
味付けがシンプルなだけに野菜そのものの味を堪能できるスープができました。ひとくち口にすれば、おなかも気持ちもぽかぽかに。誰かと一緒に食べたくなる一品です。