学業よりバイトを優先せざるを得ない「ブラックバイト」の名付け親である教育学者、大内裕和・中京大教授が、日本の教育の現状について5人の知識人と論議した『ブラック化する教育 2014―2018』(青土社・1944円)。話題は奨学金の返済に苦しむ若者、小学校の2分の1成人式、中高の部活動と広がるが、バブル崩壊、新自由主義の政策と関連づけて考えると、バラバラに見えていたことが実はつながっていることが見えてくる。
ゆとり教育を教育のなかだけで論じてしまったことは「重大な誤り」であり日本型終身雇用の解体と連動してとらえるべきであった、若者の貧困の拡大は将来の軍事動員への道筋かもしれない、など示唆に富む発言がぽんぽん飛び出す。
著者は「年々大学生が貧しくなっている」とブラック化が深刻化する予兆も感じている。読めば読むほどいかにブラックな流れに漬かっているかを突きつけられ、ため息が出るが、子供の未来のために何をすべきかを考えるヒントにしたい。(久田貴志子)=朝日新聞2019年2月23日掲載
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