はっきりもの言う、偉大な日本の理解者
24日に96歳で亡くなった日本文学研究者のドナルド・キーンさん。幅広い世界から悼む声が寄せられた。
音楽好きのキーンさん。指揮者の小澤征爾さんの楽屋をしばしば訪れ、音楽談議を楽しんだ。小澤さんは「キーンさんのことをおもうと涙が出ちゃう。偉大な日本の理解者だ。亡くなったときいて本当に涙がでちゃった……」とのコメントを出した。能楽師狂言方、野村万作さんは「ご自身が狂言『千鳥』を演じた時、驚くほど大きく立派な声だったのを覚えています。音楽にも詳しく、狂言芸と囃子(はやし)の関係を見事にとらえ、鋭く評価でき、しかもはっきりものを言う方でした」と惜しんだ。
染織家の志村ふくみさんは家族を通じてコメントを寄せた。石牟礼(いしむれ)道子さんが原作で、志村さんが衣装監修を手がけた新作能「沖宮」が昨年秋に上演されたとき、キーンさんも賛同者の一人だった。「国を超えて深い親しみを感じるお方でした。不思議に懐かしい感じがして、言葉ではなく、通じ合えるものがあったような気がします」
富山市の高志の国文学館館長で万葉学者の中西進さんも、キーンさんの狂言への関心について「教科書的な古典だけではなく、笑いを中心とした芸能からも日本文化を研究し、大衆的なスタンスを一貫して持ち続けていました。皮膚感覚で日本を世界に紹介した、絶大な功績があった」と話した。
共著のあるジャーナリスト、徳岡孝夫さんは「キーンさんが日本永住を決め、日本国籍を取得する時に『アメリカは、国籍を捨てるほどの悪い国ではない』と反対したのですが、キーンさんは『日本を本当に愛しているんだ』と。日本に、日本人にほれた人だったと思います。評論する場合も、日本人の日常行動を見る場合でも、良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり言う人でした」としのんだ。=朝日新聞2019年2月27日掲載