味わいの濃いマンガだ。
主人公は警官。事件の謎を追い、聞き込みのため見知らぬ土地に単身やって来る。人から人へと訪ね歩くばかりで、あまり大きな展開もなく物語は進むが、ミステリアスな緊迫感が全編にただよい、テンションが非常に高い。どの表情にもニュアンスがあり、どのコマにもムードがある。一見キザなせりふ回しのようだが、芝居がしっかりと練り込まれていて、人物の個性が際立つ。そんな魅力が絵を通してにじみ出てくる。なかなか、こういう力を持った作品には出会えない。
物語は「名前」をめぐって展開する。主人公は、探し求める人物の名前を手がかりに聞き込みを続け、同じ姓を持つ家族をあぶり出し謎に迫る。一方、この世界には姓を失った者たちが存在し、社会の階層をなしている。名を失うとは、どういうことなのか。名がついてさえいれば、それがその人なのか。謎めいた展開の今後も楽しみだが、このマンガの最大の魅力はやはりキャラクターの存在感だ。掲載誌は女性向けで、女性の心にこそ強く響きそうだが、男性が読んでも大変印象深い。個性の強い作風だけに、読み手を選ぶかもしれないが、ぜひ注目したい一作だ。=朝日新聞2019年3月2日掲載
編集部一押し!
-
季節の地図 あまい、からい、すい 柴崎友香 柴崎友香
-
-
韓国文学 ペク・ヒナさん「ハッピーバースデイ」インタビュー おしゃれの魔法で「自分」を取り戻す 加治佐志津
-
-
新作ドラマ、もっと楽しむ ドラマ「天狗の台所」Season3 主演・駒木根葵汰さんインタビュー 自然豊かな土地で、誰かと囲む食卓の喜び 加治佐志津
-
杉江松恋「日出る処のニューヒット」 芦沢央が「ハザードランプ」で見せた知らない作家の顔(第43回) 杉江松恋
-
中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 思い通りにならない日々どう受け止める? 三浦綾子「一日の苦労は、その日だけで十分です」から考える 中江有里 中江有里
-
本好きのための職業図鑑 大藪百合さんが語る職業としての図鑑編集者 永遠に未完成 ワクワクを刺激 岩本恵美
-
インタビュー 「5日で自分の才能が見つかる本」堀田秀吾さんインタビュー 才能がないという思い込みから抜け出そう PR by 祥伝社
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社