東京の老舗百貨店の催しに行った時、集まっていた「お得意様」が高齢者ばかりだった光景に胸を突かれた。昭和時代、あんなに輝いていた百貨店は、このまま落日をたどるのか。経済学者の著者が百貨店の「あるべき姿を突き詰める」という本書を頼りに、進化の方策を探ってみた。
シェアの縮小、eコマース(ネット上の電子商取引)の拡大、人材確保の困難など、さまざまな課題が網羅される中で、期待したのは「百貨店は技術革新のユーザーではなく、IT企業になるべき」という見出しがある章。
「ユニクロがアリババのサイトで巨額の売り上げをあげることができるのであれば、百貨店が同じようなことをできない理由はない」
これこそ、まさしく百貨店の画期だ。ただ、その先の記述は「eコマースと共存できる小売業とは何かということを、より深く考察する必要がある」と、一般論にとどまる。
百貨店を取り巻く状況は網羅されているが、イノベーションがいわれる今、公刊により課題を世に問うのであれば、より具体的な案もほしいところ。百貨店の直面している問題が、それほど単純ではないことの反映かもしれない。=朝日新聞2019年3月16日掲載
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