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第1回笹井宏之賞、大賞に柴田葵さん 「選ばなかった人生を考え、短歌に」

柴田葵さん

 2009年1月に26歳で亡くなった歌人の名を冠して創設された短歌の賞「笹井宏之賞」(書肆侃侃房〈しょしかんかんぼう〉主催)の授賞式が3日、東京都中野区であった。第1回大賞受賞作は柴田葵さんの「母の愛、僕のラブ」(50首)。

 選考委員を代表し、歌人の染野太朗さんは応募傾向を「口語短歌が圧倒的多数で20代、30代が大半。応募方法をウェブに限定したことが、応募者層や作品に関わったのでは」と説明。柴田さんの作品を「言葉同士、一首同士が強く関わりながら、連作として一つの世界を作り上げている」と評した。

 柴田さんは「選ばなかった人生について考えることがある。選べなかった、選ばなかった自分を歌にしていくと、誰かとつながれるかもしれない。そこに創作の意味がある。副賞の歌集出版では、なにかしら風を吹かせるように取り組みたい」と抱負を語った。

 授賞式後、歌人の東直子さん、水原紫苑さん、江戸雪さんによるシンポジウム「わたしたちのニューウェーブ」も行われた。1990年代、新しい文体で登場したニューウェーブ短歌については、昨年6月に名古屋で行われたシンポで、歌人の荻原裕幸さんら4人の当事者が30年間を振り返った。ニューウェーブを4人に特化し、同時代の女性歌人の名や歌は論議されなかったことが後日、ネットなどでも話題に。東さんは「狭く捉えることでこぼれてしまうものがある」と枠にはめることへの懸念を示し、水原さんは「もっと先のことを考えたい」と未来に向けて語った。(岡恵里)=朝日新聞2019年3月27日掲載