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「月刊住職」 俗世ネタ満載、悩めるお坊さん

 普段手にとらない雑誌を読んで、知らない世界を垣間見るのは面白い。

 気になる雑誌を読んでみる新連載、第一回は、滅法(めっぽう)面白いと評判の「月刊住職」を取り上げたい。

 住職というからには仏の教えや仏教美術、禅や侘(わ)び寂(さ)びといった高尚なテーマを扱うのかと思いきや、三月号は「アパート建築業者の借り上げ商法にお寺が狙われている危険な事実」「末寺七十の名刹(めいさつ)を継いだ娘婿住職が破戒で退山を迫られた真相」とまるで芸能ゴシップ誌のような記事が並んで、あっけにとられる。めちゃめちゃ俗っぽいではないか。

 だがそのおかげで、荒波にもまれるお寺業界の現状がわかって面白い。

 三月号の第一特集は「お通夜が減っている そんなでいいのか」。

 これによると、昨今はお通夜を省略し告別式と火葬のみで葬儀を済ませてしまう遺族が増えているそうだ。お寺にしてみればお布施も減るし危機感をもつのは当然だろう。ある住職は「いま我々が問われているのは『お寺は本当に必要なのか』『成仏したいと本気で思っているのか』ではないか」などと話していて、おおお、そこからですか、とツッコミそうになった。

 それ自分で言いますか?

 たしかに死んだらきっと無だから成仏も何もないし、戒名とかいらないんじゃ? と読んだ私も経費節約方向に気持ちが揺らいでしまった。

 なんだか身も蓋(ふた)もないぞ。

 たしかに「成仏したい」よりも「楽に死にたい」と考える人が増えた今、葬式仏教の存在意義は潜在的に揺らいでいるはず。このまま建前で突っ走るのか、さらなる布教に努めるか、それとも別の活路を見いだすのか、一般の職業以上にお坊さんの悩みは深そう。法人税を収めないとかズルいよな、なんてやっかんで申し訳なかった。

 そのほか法律相談、税金相談などのコーナーもあって、つまり「月刊住職」とは俗世間に生きるお坊さんのための総合情報誌なのだった。編集後記では「シルバー川柳」を法話で使うと場が和むとの耳寄り情報があり、《つまずいて足元見れば何もなし》という句に、思わず噴き出しました。

 最新の四月号には「住職なのにいつも車で寝起きするのはなぜ 高野山真言宗住職の車暮らしルポ」という特集があって興味津々。「住居、妻、家族、組織、モノ、人間関係、見栄(みえ)…ぜんぶ捨てたら究極の自由があった」って、お坊さん自身も人生に迷ってる? 取り澄ました仏教礼賛本より、はるかにお寺とお坊さんへの共感が深まりそうだ。

    ◇

 1974年創刊。仏教界全般のできごと、寺院運営、住職活動などの情報を網羅。いま仏教界と寺院に何が起きているかを取材して、記事化している。編集部は「伝統仏教僧侶の4人に1人は読んでおります」。興山舎刊・1404円。年間購読料は1万5千円。毎月1日発売。=朝日新聞2019年4月3日掲載