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「事故の哲学」書評 「絶対安全」はあり得ない

評者: 黒沢大陸 / 朝⽇新聞掲載:2019年04月20日
事故の哲学 ソーシャル・アクシデントと技術倫理 (講談社選書メチエ) 著者:齊藤了文 出版社:講談社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784065145241
発売⽇: 2019/03/13
サイズ: 19cm/237p

事故の哲学 ソーシャル・アクシデントと技術倫理 [著]斉藤了文

 災害で構造物が壊れて被害が出たら、天災なのか人災か。災害の取材を続けてきて、その論争が起きると「想定外」の議論とともに引っかかりを感じてきた。
 人間が作った「人工物」は、設計者や製造者、使い手、組織や規制が複雑に絡み合い、事故が起きたとき原因の特定も難しくなっている。本書は、従来の責任の概念や倫理観では捉えきれなくなってきた事故の構造を読み解き、技術者や社会の関わり方を論じる。
 そんな人工物で満ちている社会は、単純な理解や予測が困難で「我々の理解を越えた生態系」となり、事故は「第二の自然が引き起こす『天災』と化しつつある」。科学技術がすっきりと決まり切った世界だという理解は、基本的に誤りだと著者は指摘する。
 科学や技術が発達しても、むしろ発達するからこそ、天災化した事故は避けられず、「絶対安全」はあり得ない。つくる側も使う側も共有すべき構造だ。