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仏頂面な執事の感情、表情以外でどう伝えるか 清原翔さん、映画「うちの執事が言うことには」に出演

文:根津香菜子、写真:有村蓮

――執事を演じるにあたって、クランクイン前から所作の指導を受けて撮影に臨んだそうですが、原作を読んだ感想と執事役が決まった時の気持ちを聞かせてください。

 映画の出演が決まってから原作を読ませていただいたのですが、僕が演じる役は執事なので、所作や言葉遣いが難しそうだなと思いました。でも、ストーリーを読み進むうちに、花穎と衣更月が成長する過程と、主軸になるミステリーがあって面白いと思いました。執事は動作中に言葉を発してはいけなかったり、お辞儀の仕方も4パターンあったりして、所作の一つひとつがやはり難しかったです。僕は普段の姿勢が悪いので、まずは姿勢を正すところから始めました。

――私のような一庶民は、本物の執事の方をお見掛けする機会が中々ないのですが、清原さんは執事という職業にどんな印象をお持ちですか?

 学生の頃に執事が出てくる映画などを見たことはありますが、動作を含め、色々なことが美しいという印象です。所作を指導していただいた方を見ても同じことを思いましたが、動きや言葉、どれをとっても美しくてパーフェクトという感じでした。「こんな職業が世の中にあるの?」って思うくらい、執事の仕事は大変だと思います。日本にも実際に何十名かいらっしゃるそうですが、これを職業にできる人って肝が据わっているというか、プライベートもほぼないし、常に主のことを考えていなければならないから、気も休まらないですよね。自分のすべてを捧げないとできない仕事だと思います。

――原作では仏頂面で感情をあまり表に出さない衣更月ですが、映画で清原さんが演じた衣更月は、語尾の上げ方や視線の動き、全身から漂う雰囲気から「衣更月なり」の喜怒哀楽が伝わってきました。感情を表すのは、顔の表情だけではないんですね。

 そこがこの役を演じるうえで一番難しかったところです。どこまで表情に出すか、出さないかを、久万(真路)監督とも色々相談しました。僕自身も普段からあまり顔に出る方ではないので、最初はいつもの自分の表情加減で演じたら「もっと出していいのでは?」という監督からのアドバイスで、自分なりに全力で出した結果「それでちょうどいい」とOKをもらえました(笑)。その加減をつかむまでは難しかったですね。あとは口調や雰囲気で、表情では表せられないところをどうやって伝えるのかを意識して演じました。

――衣更月を演じて、何か学んだことはありますか?

 初めは、当主として未熟な花穎に仕えるのは納得のいかないところもあったかと思うんです。だけど一緒に過ごすうちに、花穎という人物を知っていくことで徐々に衣更月自身の考え方も変わっていくんです。自分が主を心から信頼しなければ、主からも信頼してもらえない。その過程を演じていく中で、お互いの信頼関係を築くには「何事もファーストインプレッションで決めるものではないな」と思いました。

――あることがきっかけで、花穎が衣更月に不信感を抱き、仲違いするシーンが特に印象に残っているとのことですが、その理由を教えてください。

 この出来事によって、衣更月が色々なことに気付き、執事として烏丸家と使用人たちを守ろうとする「熱い部分」が出てくるんです。でも、自分一人で何とかしようとした結果、花穎からの信頼を失ってしまうという、物語上重要な場面だったので特に丁寧に、大切に演じました。普段は廉とちょくちょく話をする仲でしたが、この撮影がある前あたりからは、どちらからともなく口数が少なくなっていましたね。このシーンに持っていくまでの雰囲気作りが自然とできていたのかなと思います。

――本編ではそんなシリアスな場面もありますが、エンドロールで流れる映像には、永瀬さんにダンスの振付を習ったり、お互いの役を交換して演じるシーンがあったりと、お二人の仲睦まじい姿が垣間見えて微笑ましかったです。

 この映画を最後まで楽しんでもらいたかったので、廉と「エンドロールで何か面白いことしたいよね」ってずっと相談していたんです。それ用に色々と撮ってもらっていたので、無事に使われて嬉しいです。ちょうど廉がKing & PrinceでCDデビューした頃にこの映画の撮影をしていたので「ちょっと振り教えて」って頼んだのですが、何回も教わったのに1回もちゃんとできなくて、僕には無理でした(笑)。廉が現場に入ると場がパッと明るくなって、撮影初日から割と親しく話せました。こんなに撮影の合間もワイワイできた人は貴重ですね。

――本作はミステリー小説が原作ですが、清原さんは普段どんな本を読みますか?

 実は全くと言っていいほど本を読まなくて(苦笑)。大学も理工学部出身で、文章を読むのが苦手だから国語の成績も悪かったんです。でも、伊坂幸太郎さんの作品を読んで、初めて「小説って面白いかも」って思いました。中でも、僕の人生で初めて読み切った小説『砂漠』は、伏線回収が秀逸でした。登場人物に西嶋という男がいるんですが、彼の言うこと、やることがかっこいいし、セリフの名言も多くて大ファンなんです。未だに僕の中では不動の一位です。