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フルポン村上の俳句修行 「俳句でもっと文芸寄りになりたいの?」の質問にタジタジ【後編】

文:加藤千絵、写真:樋口涼

>「倒」という字がお題の屍派句会・第1ラウンドはこちら

 俳人の北大路翼さんが家元の、新宿・歌舞伎町を根城とする俳句一派「屍派」の句会に参加した村上さん。メンバーは北大路さん、村上さん以外に8人です(紹介されたまま書いています)。

・句会を仕切っている木内龍(たつる)さん・ゆり子さん夫妻
・インドと日本を行き来しているゆかりさん
・パンツを買い替えたばかりのゆーきさん
・「おそうぢくん」と呼ばれている本名・そうぢさん
・糖尿病のおさじさん
・見た目は女性だけど男性で、アメリカ生活が長く日本語が特殊なこゆきさん
・C-C-Bの関口さん ※本物

句会場になった「砂の城」。壁には今まで作った俳句の短冊がずらり

 「倒」を字題とした句会に続き、フルーツポンチにちなんで「フルーツっぽい句」をお題にした句会を開くことになりました。若干予想されたことではありましたが、下ネタ祭りになったので、それを除いた句を厳選して紹介します。

死刑囚最後のもとむは夏みかん こゆき

北大路:松山ディスだね。「最後にもとむ夏みかん」で「は」はいらないかな。松山の人は夏みかん食いたくなるのかな。

関口:刑務所って甘いものがないから。

こゆき:最後にふるさとのものが食べたくなるとかそういう感じ。

北大路:女の人の感じもするね。

いちご狩りパンフレットの他人かな 村上

北大路:なんかおもしろくなりそうだけどね。

こゆき:義理の父とか?

龍:笑顔がすごい決まりすぎてて、明らかにこれはモデルのカップルだなって思っちゃう、つまり他人って想像しちゃう。

北大路:「モデルかな」でいいんじゃない。

村上:これは僕です。他人だとちょっと言い過ぎですよね。

高い水レモンが入つていゐるだけの ゆかり

一同:お~!

龍:これいいね。俺は好きだよ。1杯800円の水ね。

北大路:いい句だけど、ナチュラルウオーターとかが今の俳壇のはやりで、あのへんを新しい素材として詠みたがる傾向があるから要注意。

「屍派」家元の北大路翼さん

青林檎昨日作つたやうなカフェ ゆかり

北大路:いいじゃん。青林檎は店の名前かもしれないし、そこで働いてる子、「青林檎で~す」って超足が細い田舎の女が出てきたりさ。

龍:店長も未経験で、とりあえず暇だからカフェ作りました、みたいな。オペレーションも超慣れてなくて、コーヒーもまずくて。

関口:町田あたりでね。

北大路:2階が雀荘みたいな(笑)。新興住宅地の雰囲気があるよね。

葬列がフルーツパフェにのびている そうぢ

北大路:これシュールだね、おもろいね。

ゆかり:寺山修司的な。

北大路:フルーツポンチにのびているでいいんじゃない。今日お客さん来てるなと思ったら葬列だった、っていう(笑)。

村上:すいません、ちょっと。

たまに種あるからイラっとしたる柿 ゆり子

北大路:子規とかはこういう句好きだと思うな。怒ってないんだけどうれしさもあって、っていう。こういう柿の使い方とかも愛があっていいな。イラっとするっていうのはちょっと言葉として俗っぽいけど、内容としては「種ありてもうれし」みたいな感じが。柿がありがたかった時代も感じさせて、これは柿に対する愛が非常に感じられていいんじゃない。昔は種が当たり前だけど、今は種がないわけじゃないじゃない。

村上:種がないことが主流ですもんね。

北大路:それに対する批判も入ってるし、いいんじゃないかな。

パイナップルアレルギーちょっとバカにされ ゆり子

村上:僕これいいなと思うんですけど、僕的な感覚だとパイナップルアレルギーをちょっと自慢してっていう感覚っていうか。現代でいうとちょっとだけ不幸なことは自慢になるのが主流かなって。僕もかゆくなるんで、ちょっと鼻高々っていうか。

龍:選ばれしアレルギーだぜって。

村上:花粉症もちょっと自慢ぎみのあるじゃないですか。

龍:花粉症じゃない人ってマウンティングされたって思うらしくて。「パイナップルアレルギーちょっと自慢され」。全然自慢してる意図はないんだけど、なんかムカつくっていう、その感じね。

北大路:パイナップルって俳句あんまりないけど、素材としてはおもしろいよね。いくらでもネタになる気がする。今のうちに我々でパイナップルを詠みつくそう。

オレンジの検索画像ことごとく光る 村上

北大路:オレンジっていうのは、読売巨人軍に対するあれですか。俺はいやがらせだと思いますけどね。

龍:きっと読売のことでしょう。

村上:これ僕です。検索画像って基本的に美しく見えるようにシャッターで光らせてる、っていうだけの。

東京で売られるために間引いた実 おさじ

龍:確かに、東京で売られるためっていうのが商業的ですごいね。ブドウとかもあの房を作るのにめっちゃ間引くから。

こゆき:グラビアアイドルっぽい。

関口:昔の人買いとか女衒とか。

龍:東京でっていうのがまたいいよね。まさに人買いとか出稼ぎとか。東京の悪者感がいい。

おさじ:メロン想定です。メロン漬けっていうのがあるんですよ。間引いた小さい実を漬けものにするの。

北大路:ウリだからね。みそ漬けにしてもおいしいんだよ。メロンの皮とかね。

チェリーという名曲かいたスピッツにくし 関口

一同:(爆笑)

北大路:おいおい、C-C-Bだろこれ。ロマンチックこら。

龍:エネルギーがあってすばらしい。

北大路:ちゃんと仕事しろ。

 放言、下ネタ、爆笑、ときどき真面目な句評が飛び交った句会が終わり、おのおのが下のバーに戻っていくと、部屋には嵐の後のような静けさが――。C-C-B・関口さんに「疲れ切ったでしょう?」と声をかけられ、「そうですね・・・・・・」とつぶやいた村上さんでした。

句会後、北大路翼さんと村上さんが対談

北大路:これから何がやりたいの? 本当は俳句でもっと文芸寄りになりたいの? お笑い嫌いでしょ。

村上:全然そんなことないですよ! お笑いが大好きでしょうがないんですけど。仕事なんですから。

北大路:俺は俳句嫌いとか言っちゃうけどね。村上さんは器用だからな。器用な人はあんまりうまくいっちゃって、やっぱ句がしらけてる。

村上:そんなことないですよ、僕。器用に見えてるだけで、まったく器用じゃないですよ。

――今日の句会はその場でお題が出されて、時間制限があって、何句出してもいいという、今までとはかなり違う句会でした。

村上:もう、どうしようかなっていうだけですよね(笑)。焦るっていうか、どうしようかなっていうのと、たぶんいわゆる俳句っぽい風景を詠むのとは違うだろうなと。そういういろんな雑念の中でやってました。けど、とりあえず最初の1句目をどうしようと思って、とりあえず「倒れる」で使えそうな言葉は何かな、例えば倒産が出てきた。倒産してるのだったら何がおもしろいかな。普通の会社より学習塾の方がおもしろいかな、とかそういう感覚で作っていって、そこに季語はむりやり足した感じにはなりました。

――屍派の俳句は、季語というより、その中に生きてる人が主役ですよね。だから季語があってもいいしなくてもいい。

村上:季語が主役という、いわゆるクラシックな流れじゃなく、人ですよね。ただみなさんの批評を聞いてると、意外と季語に対する意見があるから、よりむずかしいなと。

北大路:季語じゃなくて季感ね。季節感なんです。季感は何をやっても出てくるんです。季語の付け方で補足をすると、(上五、中七の)12文字使った後でなにを付けるかっていうと、状況を付け加えるための付け方と、心情として抽象的な比喩のイメージがある付け方と、まったく違うものを付けてイメージを変えるための付け方の3パターンあると思うんですよ。

村上さんの場合器用すぎるから、3つを全部入れようとしちゃう。たぶん商売的に、人に分かってもらわなきゃいけないよね、お笑いも。説明をしなきゃいけないっていう宿命があって、非常に丁寧なんですよ。それがいいとする人たちもいるんです。今までやってきたとこは季語が主役で偉いんで、そういう作り方を推奨してきた。でも僕たちはこういうことが起きてる中に、季語でもうワンクッション違う展開を狙うような作り方なんです。

倒産の学習塾や朧月」の句とか、内容も合ってるし景色も合ってるし、全部合っちゃうんだけど、逆に読んでる人は倒産した塾の中に朧月くらいは見えてるんだよ。だから蛇足とまでは言わないけれど、あんまり付け足す効果がないから、季語を付け足すことでどっかを裏切ったり、っていうのがほしいかなって思った。非常に厳しい意見ですけどね。

村上:分かります。本当に言い訳でもないし、言い訳でもあるんですけど、僕がこの限られた短い時間の中で、正直季語の部分はおざなりに付けてるんですよ。だから12音いいものができたときに、これくらいならまあ取りあえず、っていうのを付けました。でもそれを僕が選び取ってくるってことは、軸があるとは思うんですね。確かにそれが僕の軸にあるから、今後推敲するときにどれくらい崩していくかですよね。このバランスはでも、センスですもんね。

北大路:センスだし、やっぱり場数を踏んでいくと、このくらいは(読み手は)読んでくれるんだっていうのは分かってくるから。まだ読者に恵まれてなくて、自分の中の想定してる読者が弱すぎるんで、これくらい言うとこう思うだろう、ってまだ自分優位なんで、もっと読者側に寄り添って、読んでくれると思って作らないと。手放せないんだよね。句を。差し出さなきゃ。でも性格的にできない人でしょ?

村上:それはそうですね・・・・・・。だから僕はできないというのを自分で超えていきたいんです。

北大路:あと偶然性を信じたほうがいいですよ。理詰めにしちゃうんで。やっぱ僕たちが時間をきってやってるのは偶然性に頼ってるところがあって、偶然の方がおもしろいことが突然出てくることがある。あと5秒でパパって作ったものにすげーことが書いてあることもあるし。

村上:確かにね、偶然性がおもしろいことが作れるのもめちゃくちゃ分かるんですけど、偶然性がすごいものを生むっていうのは偽物だと思っちゃうんですよ。偶然性に逃げてるだろうって思っちゃうんですよ、僕は。でもめちゃくちゃ一生懸命作ってる中にはみ出すものが偶然性だっていうのは分かるんですけど。

北大路:下手な句が作れないんですよ。欠点がないところが欠点になるし、もうそこまで来てるレベルだから、もっとコテンパンにされた方ががいいと思うよ、あなたは(笑)。

【俳句修行は次回に続きます!】