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フェリー専門誌「フェリーズ」 未開の大海原、ワクワクの予感

 個人的な話で恐縮だが、このところフェリーに乗りたい気分が高まっている。

 なぜかというと、昨今夜行列車がどんどん豪華になってきたからである。豪華ツアー列車に押されて公共交通機関としての夜行列車は姿を消しつつある。そのせいで夜の移動ならではの、あの心細くてそれでいてワクワクするような旅情を味わおうと思うと、バスかフェリーを選ばざるをえなくなってきているのだ。

 ただ、バスはずっと座っていなければならないから開放感がいまひとつだ。その点フェリーはデッキで海を眺められたりして、夜の移動の非日常的な高揚を存分に楽しむことができる。

 こうして自分の中でのフェリー人気が高まってきた。そこでフェリーの雑誌でも読んでみようと書店に行ったところ、電車やバス、飛行機の雑誌はいくつもあるのに、フェリー雑誌は見つけられなかった。

 クルーズを含めた船旅全般を手がける雑誌はある。だが、私はあくまでフェリーにこだわりたい。豪華客船で船旅を楽しみたいわけではなく、移動手段として乗りたいのだ。最終的にネットで調べ、発見した。

 その名は「フェリーズ」。

 年1回だけの刊行だそうである。書店でなかなか見つけられなかったのはそのせいか。

 早速、「5月臨時増刊」号を読んでみると、日本各地の中長距離フェリーを紹介する記事が多くを占めていた。

 なんでも最近のフェリー界のトレンドは「乗客のプライバシー」重視だそうで、大人数の乗客が大部屋で雑魚寝する光景は減少傾向にあるらしい。それはべつにいいけど、値段はあまり上げないでほしいな。

 「フェリーズ」は全国の主要航路の一覧なども載っていて使い出がありそうな一方で、マニアックな記事はほとんど載っていなかった。電車の雑誌ならもっと深掘りした記事がいろいろ載っているのに、このあっさりした感じはフェリー界にファンがあまりいないということだろうか。鉄道でいう「乗り鉄」「撮り鉄」「音鉄」のようなジャンルの細分化も起こっていない。あるいは電車やバスに比べて運航数が少ないこともあるのかもしれないが、ひととおり読み終えると、もっと深く読みたいという不満が残った。何を読みたいのか自分でもはっきりしないけれど、もっとマニアックに踏み込んでほしい。逆にいえば、ここにマニア道のブルーオーシャンがあるんじゃないか。そんな予感がしたのである。=朝日新聞2019年6月5日掲載