「中国行ってレンコン1本1万円で売ってきなさい」。民俗学の研究と同時に、茨城の実家のレンコン農家で働いていた著者は、先輩研究者の言葉に30代で奮起。国内で1本5千円と、相場の5倍の値段で売ることを思い立つ。
「伝統」とは「過去に意図的に創られたものである」との民俗学の理論をあてはめ、祖父より前から続く家業なので「大正15年創業」の「老舗」と名乗って販売に着手した。
最初は不振だったが、展示商談会への出展、自身のテレビ出演などあらゆる手段を駆使。幸運や関係者との出会いもあって、やがて注文を断るほどの「バカ売れ」に。ただ、本書でマーケティングの方法が伝授されるわけではない。
「農業は資本主義の最底辺」。著者は子供時代から、苦労の割には報われることの少ない農業にマイナスイメージを抱き、家業を隠した。それを農家の「哀(かな)しみ」と表現し、「全ての農業者に共通した背景」ではないかという。
父親のつくるレンコンは一級品だったが、品質だけでは商品力は不十分で、「伝統」を創造し、超破格の値づけをしたら注目されブランド化した。これは現代消費社会への農家からのリベンジではないか。そんな読後感が残る一冊。=朝日新聞2019年6月15日掲載
編集部一押し!
-
売れてる本 凪良ゆう、瀬尾まいこ、坂木司、一穂ミチ、三浦しをん著「本屋さんのある街で」 人生が交差する町の止まり木 山下
-
-
わたしの大切な本 お笑いコンビ「ラランド」ニシダさんの大切な本 他者を理解する 最高のエンタメ
-
-
とりあえず、茶を。 眠い季節 千早茜 千早茜
-
インタビュー 美村里江さんが言葉を紡いだ絵本「お花のこどもたち366」 十人十色のおしゃべりに耳を澄ませて 加治佐志津
-
中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 自分の言葉は人を貶めるより自分を鼓舞するほうがいい 「さみしい夜にはペンを持て」のタコジローの変化に思う 中江有里 中江有里
-
一穂ミチの日々漫画 増村十七「進め!白鼻進」 漫画家の戦争協力、他人事ではない危うさ(第15回) 一穂ミチ
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版