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「仕事文脈」 働き方、等身大の考察に共感

 たいていの人は仕事で悩んでいる。働かないという選択も含めて、仕事にどう向き合うのか常に問われている。働き方自体が大きな転換期にあり、いろいろな議論が巻き起こっている昨今だが、そんななか気になっている雑誌がこれ。タイトル通り、仕事に関するあれこれを考察するミニ雑誌である。

 最新号では「IT、AI、IoT、えっ?」と題して昨今の技術革新とこれからの仕事について特集している。

 読んでみると、AIに仕事が奪われるとか奪われないとか、いっそ奪われたいとか、ITは仕事してない人のほうが使いこなせるとか、IT立国を目指すルワンダの道端でボーッと座ってる人に「何してるの?」と聞いたら「何もしてない」と答えが返ってきたとか、妙に親近感の湧くフレーズが頻出する。

 未来の働き方はこうだと大きく振りかぶったり、暗澹(あんたん)たる未来を予想してただ嘆いたりするわけではなく、等身大の(どの層に軸足を置くかで違ってくるが、いわゆる平均的もしくは平均よりどちらかというと下の人たちにとって等身大の)目線で世の中を考察していく。おかげで颯爽(さっそう)と世の先端を走っているわけではない自分のような者には共感できる記事が多い。

 編集者対談では、AI時代の仕事や生き方について書かれたベストセラー本の中身を「世の中のことなんてどうでもいい」「社会に還元っていうよりは、サバイブなんでしょうね」と喝破していてハッとさせられた。自分も最近は、この社会をどうやって生き延びるかってことばかり考えていた。

 大きな広告がないおかげで、余計な情報に惑わされず、落ち着いて読んでいけるのがいい。だってかっこいい写真で埋め尽くされた雑誌だとどこまで信じていいかわからなくなってくるから。もちろんどんな書かれたものも100%信用できるわけではないけど、かっこつけたりアジったりしてない分だけ安心できる。

 前号までの特集は「悩み、うざい」「お金文脈」「もしもし、体」「Don’t work too hard.」「ごはんと仕事」「旅と仕事」「女と仕事」といった具合で、どれも気になる(あるいは身につまされる)テーマばかり。しかも読んでみると意外な視点にうならされることもあり、あとがきまで面白いから、薄くて地味な見た目のわりにお得感はいっぱいだ。

 それにしても、仕事というキーワードひとつでどんなジャンルも語れてしまうことに驚く。人生における仕事の比重、大きすぎやしないか。=朝日新聞2019年7月3日掲載