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ANAのキャビンアテンダントがオススメする文庫本とは?

文:五月女菜穂 写真:斉藤順子

――キャビンアテンダント(CA)のみなさんはお忙しいと思いますが、普段本を読みますか? 読むとしたらどんな本ですか?

ANA客室乗務員 大道寺さん

大道寺さん:私はいつもバッグに文庫本を1冊入れています。読みたい本があれば、カフェに行って読んだり、待ち合わせの待ち時間に読んだり、隙間時間で読んでいます。アメリカ西海岸へのフライトなど、ステイ(滞在)が20時間ほどとすごく短い時があるんですね。そういう時は、ホテルで寝て起きたら外が暗く、ほとんど外出できないので、読みかけの本を読むことが多いです。

ジャンルは幅広く読むのですが、最近はコミュニケーションの取り方の本を読んで、どういう風に伝えるのがいいのかを研究しています。それから歴史の勉強をすることにはまっているので、世界史をおさらいできる本も読みました。

松本さん:私にとって本を読む時間は、自分のマインドリセットの時間です。プライベート・仕事問わず、何かに取り組む前の時間に、30分など時間を区切って読みます。本を読むことで、気持ちのスイッチが入るんですよね。

人からいいと聞いたものは全部読むように心がけているのですが、基本的に私は図書館から借りてくることが多いです。2週間で2,3冊のペースで読んでいて、歴史の本と自己啓発や哲学の本をよく読みます。

ANA客室乗務員 桧垣さん

桧垣さん:CAには便乗といって、これから乗務する空港に行ったり、乗務し終えた空港から帰ったりする、移動のためのフライトがあるんですね。便乗のときは、乗務ではないので、お客様と同じ席に座ります。時間を有効活用して本を読むことが多いです。プライベートでは、就寝前や自宅でゆっくり過ごしている時に本を読みたくなりますね。

ジャンルとしては、小説が多いです。自分で本屋さんに行って買う小説もありますし、私の父が本を読むのが好きなので、父に勧められた本を読むこともあります。

――機内でお客様は、どういう過ごし方をされている方が多いですか?本を読む方はいらっしゃいますか?

大道寺さん:路線やクラスによってまちまちな印象があります。個人的には、エコノミーのお客様がより本を読んでいるかなと思います。ビジネスやファーストクラスのお客様は、長距離の移動の場合、座席をフルフラットにしておやすみになられる方が多いので。

桧垣さん:そうですね。また、国内線ではシートモニターがない路線がほとんどなので、文庫本をお読みになっている方が多い気がします。覚えているのは、機内に文庫本を忘れてしまった方がいらっしゃって。娘さんが小さい頃に作ってくれたしおりを挟んでいたとお聞きして、乗務員みんなで探し出して、無事にお戻ししたことがありました。

ANA客室乗務員 松本さん

松本さん:お客様が読んでいる本にはつい目がいってしまいます。どんな本を読んで、そこからどんなことを学ばれて、どんなお仕事をされているのか、想像します。お客様におすすめしていただいた本や、気になった本は読むようにしています。

――ずっと読んでいる本やお気に入りの本はありますか?

松本さん:小さな頃から繰り返し読んできたのは、司馬遼太郎の『坂の上の雲』です。自分のバイブルのような本です。父に勧められたのがきっかけで読み始めたのですが、高校生のときにNHKでドラマ化されて。CAになってからも、松山にステイした際、一人で坂の上の雲ミュージアムへ行きました。

「まことに小さな国が開花期をむかえようとしている」時代を生きる登場人物たちと自分とを重ねるんですよね。私も大志を持って、生きていきたいと思います。読むたびに発見がありますし、『坂の上の雲』専用のメモをつくるほど好きです。

桧垣さん:ドラマ化もされた『水族館ガール』(木宮条太郎)という本です。もともと動物や水族館が好きで、さらに主人公が同世代の女の子。市役所勤務から、水族館という全く別の世界に出向になります。いろいろな世界に飛び込んでいって、壁にぶつかりながらも、乗り越えていく姿に共感します。また、一見きらびやかな水族館の世界ですが、裏側は大変でシビアな部分があることも知りました。面白いです。

大道寺さん:私はあまり同じ本を読み返さないのですが、『人を動かす』(デール・カーネギー)は何度か読み返しています。後輩に仕事を伝える機会が多くなっていくなかで、どうやったらうまく伝えられるだろうと壁にぶつかった時があって、その時にオススメしてもらった本です。読んで、仕事に応用して、また読んで思い出して、と繰り返しました。

――実際に文庫本フェアの本を数冊お持ちしました。この夏に読みたい本2冊ほど選んでいただけますか?

大道寺さん:私は『オリジン』(ダン・ブラウン)と『さよなら、ビー玉父さん』(阿月まひる)を選びました。そもそもダン・ブラウンのラングドンシリーズがすごく好きなのですが、『オリジン』は未読でした。また、つい先日スペインへ旅行に行ってきました。この小説はスペインが舞台なので、自分が実際に観光したような場所が出てくるだろうなと思って。

そして『さよなら、ビー玉父さん』は、帯の「泣けます!」という文言に惹かれて選びました。読んだことのない作家さんですが、小説を読みながら思いっきり泣いてみたいなと…

松本さん:『帰郷』(浅田次郎)と『作家と一日』(吉田修一)を選びました。『帰郷』は好きな歴史物の本ですし、「戦争に運命を引き裂かれた名もなき人々」と書かれた帯に惹かれました。『作家と一日』はANA機内誌「翼の王国」で連載されている作品なので、改めて読んでみようかなと思いました。

桧垣さん:私は最近本屋でよく見かけて、気になっていた2冊を選びました。一つは『裸の華』(桜木紫乃)。ストリッパーという私の知らない世界の話なので、面白そうだなと。もう一つは原田マハさんの『さいはての彼女』。「頑張りすぎるあなたへ100%ビタミンチャージ!」という表紙の言葉に惹かれました。私も頑張りすぎるところがあるので。

――改めて、文庫本の魅力は何だと思いますか?

松本さん:本を通じて、他人が歩んだ人生や経験を追随できることです。限られた私の人生の中で、経験を何倍にもできることが最大の魅力だと思います。それに文庫本は高くても数百円。その値段以上の価値があると思います。持ち歩きやすいですし、費用対効果が本当に大きいです。

大道寺さん:そうですね。分厚い文庫本もありますが、気構えずに、さらっと手にとって読めるのはいいですよね。さらに、私たちは移動がとても多いので、荷物にならずに持ち運びできることもうれしいです。

桧垣さん:私は表紙や帯に惹かれて本を買うことが多く、「今日はこの本を読もう」と選べるのが楽しいです。いつも読み終わった本は実家に持って帰るのですが、本棚を見て「あぁこんな本読んだなぁ」、「今読んだらどんな感じだろう」と思うことができます。個人的には、電子書籍よりも愛着がわきます。