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「日米地位協定」書評 問題のありかを明快に抉り出す

評者: 宇野重規 / 朝⽇新聞掲載:2019年08月03日
日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年 (中公新書) 著者:山本章子 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784121025432
発売⽇: 2019/05/22
サイズ: 18cm/256p

在日米軍の基地使用、行動範囲、米軍関係者の権利などを保証した日米地位協定。“過剰な優遇”の根源とは。実際の運用が非公開の「合意議事録」に基づいてきた事実など、日本が置かれ…

日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年 [著]山本章子

 どうも問題は日米地位協定にある、そう思う人は少なくないはずだ。
 在日米軍の基地使用や米軍兵士の裁判権などを規定するこの協定には、多くの問題がある。例えば2004年に米軍ヘリが普天間基地に隣接する大学構内に墜落した際には、消火に成功した宜野湾市消防本部が立ち退かされ、1週間にわたり、大学教職員、警察や行政関係者、外務省担当者までもが立ち入りを禁止された。異常に思えるこのような事態はすべて日米地位協定に基づいている。
 しかし、それでは協定のどこが具体的におかしいか、正確に言える人は多くないだろう。本書は新書ながら、この協定の歴史的由来、具体的内容、国際比較を含め、問題の全容を詳細に検討する。国際政治史の研究者による本書は、日米地位協定を学術的に検討する労作であると同時に、「ここに問題があったのか!」という気づきを読者に与えてくれる明快さを持つ。
 敗戦により占領された日本は、その「独立回復後」にも、在日米軍が占領軍時代と変わらぬ地位と特権を維持することを許す。米軍駐留の諸条件は、日米安保条約ではなく日米行政協定によって規定されたが、この協定にも米軍の特権は明記されることはなかった。その実際は日米合同委員会に委ねられたのである。
 さらに1960年の安保改定により、日米行政協定は日米地位協定に変わるが、その際に併せて日米地位協定合意議事録が結ばれる。2000年代までその存在が公開されることのなかったこの「密約」こそ、実はすべての鍵であった。この議事録を撤廃し、日米地位協定を条文通りに運用することで、問題の多くが改善されると本書は説く。
 日米安保自体は支持するという著者であるが、それゆえに平時と有事の区別がない日米地位協定、さらに同議事録の問題点を厳しく抉り出す。沖縄基地問題を考える人にとって絶好のヒントとなる本である。
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やまもと・あきこ 1979年生まれ。琉球大専任講師(国際政治史)。著書に『米国アウトサイダー大統領』など。