「皮膚はすごい」書評 動植物の「皮膚」の役割とは
評者: 黒沢大陸
/ 朝⽇新聞掲載:2019年08月10日
皮膚はすごい 生き物たちの驚くべき進化 (岩波科学ライブラリー)
著者:傳田光洋
出版社:岩波書店
ジャンル:生命科学・生物学
ISBN: 9784000296854
発売⽇: 2019/06/06
サイズ: 19cm/125,5p
皮膚はすごい 生き物たちの驚くべき進化 [著]傳田光洋
著者は化粧品会社の研究員。とはいえ、美肌を語る本ではない。人間や動物、植物の「皮膚」の役割を平易に解説している。
皮膚のバリアー機能を人間や動植物の例を示しながら読み解き、皮膚の構造や免疫機能、そこに生息する細菌の役割も考えていく。
速く泳げるサメの皮膚、全身の色を変化させるタコやイカ、皮膚も様々に進化してきた。エアプランツとして知られるチランジア、砂漠に生きる植物メセンの「皮膚」が過酷な環境で果たす機能も興味深い。
著者は、皮膚を家に例え、サルのような体毛をなくした人類を「家を出た」と表現する。外界にさらされた表皮からの情報を処理するため脳が発達したと考え、「特異な皮膚が人間を作った」と主張。皮膚の役割を重視して、インターネットのような技術で情報伝達できるのは、現状では視聴覚情報だけなので「それだけですべてを判断する危険性もある」と指摘する。