「アフリカの難民キャンプで暮らす」書評 一人ひとりの人間の姿が見える
評者: 宇野重規
/ 朝⽇新聞掲載:2019年09月21日
アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日
著者:小俣直彦
出版社:こぶな書店
ジャンル:国際
ISBN: 9784991084201
発売⽇: 2019/06/20
サイズ: 19cm/239p
アフリカの難民キャンプで暮らす ブジュブラムでのフィールドワーク401日 [著]小俣直彦
「難民」という言葉に、どんな人々を想像するだろうか。ガーナの難民キャンプでのフィールドワークを描いた本書を読むと、そのイメージが変わってくる。本国にも、受け入れ国にも定住できず、難民生活が長期化している彼らや彼女らは、しかしそこで恋をしたり、サッカー観戦を楽しんだり、喧嘩したり、新たなビジネスを起こしたりと、「当たり前」の日常を過ごしている。
難民支援の実務を担った後、博士課程の大学院生として現地で暮らした著者は、そのような人々との接触を生き生きと描き出す。そこにいるのは、サムであったり、パトリシアであったり、みな固有名を持った一人ひとりの人間だ。第三国への移住を夢見て、ネット上で先進国のスポンサーや恋人を必死になって探す姿は、漠然とした「難民」のイメージを、ごく当たり前の同時代の隣人たちに変えてくれる。日本の難民受け入れ政策を含め、考えさせられる。