「日本社会のヘイトスピーチ」書評 在日コリアンを取り巻く現状は
評者: 本田由紀
/ 朝⽇新聞掲載:2019年11月30日
在日コリアン弁護士から見た日本社会のヘイトスピーチ 差別の歴史からネット被害・大量懲戒請求まで
著者:金 竜介
出版社:明石書店
ジャンル:社会思想・政治思想
ISBN: 9784750349060
発売⽇: 2019/10/10
サイズ: 19cm/266p
日本社会のヘイトスピーチ [編]金竜介、姜文江、在日コリアン弁護士協会
ヘイトスピーチとは単なる「悪口」ではなく、人種差別を煽動する表現を意味する。人種差別的な偏見や憎悪を動機とする犯罪はヘイトクライムと呼ばれる。
本書では、日本におけるヘイトスピーチ・ヘイトクライムの現状、対策、歴史、朝鮮学校の実情、裁判例、法的規制の課題などをつぶさに描く。日本でのヘイトスピーチ・ヘイトクライムは、戦前から現代まで、主に「(北)朝鮮」「韓国」に対して行われ、特に在日コリアンが標的とされてきた。典型はヘイトスピーチを叫びながら街頭を練り歩くヘイトデモである。デモ参加者の何倍もの数の警官が彼らを守るように囲んで歩き、デモへの抗議者を妨害する現場を私も何度も目撃した。醜い差別の横行に激しい怒りと情けなさを感じた。まして直接に罵声が向けられている人々の恐怖はどれほどか。
日本の爛(ただ)れた過去と今を知り、そこから脱却するための跳躍板とするべき書である。