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冬休みにおすすめの本を紹介 寒い日をおうちで過ごす良き相棒に

「フラミンゴボーイ」(小学館)

 イギリス人の青年ヴィンセントが旅先の南フランスで話を聞くという枠の中に、フラミンゴが大好きで動物と気持ちを通じ合えるロレンゾと、社会から排斥されてきたロマ人のケジアの物語がおさまっている。ナチスの脅威、戦争に翻弄(ほんろう)される人間、差別、動物保護など様々なテーマを扱いながら、巧みなストーリー展開で読者をひきつけ、おもしろく読ませる=小学校高学年から(マイケル・モーパーゴ著、杉田七重訳、1500円)

「ゆきのひ」(偕成社)

 朝起きると外は雪。ピーターは赤いマントを着て外ヘ出ると、足跡をつけたり、枝から雪を落としたり、雪だるまを作ったり、雪の山を滑り降りたり、ひとりで楽しく遊ぶ。原書刊行は1962年。アフリカ系の子どもを主人公にした絵本がまだ少ない時代に出され、時を超えて読者を獲得している。コラージュを主とした絵のデザインや色づかいは、今でも新鮮ですばらしい=幼児から(エズラ・ジャック・キーツ作、木島始訳、1200円)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「アドリブ」(あすなろ書房)

 フィレンツェの大聖堂で聞いたフルートの音色に魅せられ国立音楽院に進むことになった15歳の少年ユージ。練習を積み、第1オケで演奏するまでに上達するが、プロになるためには大きな試練が待ち受ける。高額な楽器代は母子家庭ではとうてい払えない。人生の岐路に立たされたユージがどんな決断をするのか、最後まで目が離せない。音を楽しむように演奏する彼を心から応援したくなる=中学生以上(佐藤まどか著、1400円)

「メリークリスマス」(BL出版)

 この絵本には世界18カ国の子どもたちが12月のはじめから、いろんな準備をしてクリスマスを迎える様子が楽しそうに描かれています。我が家でも12月になるとドイツの子どもたちのように、アドベントカレンダーを出して24日までの毎日、小さな窓を開けたものです。今年は新しい工夫をしてクリスマスを祝いませんか?=小学校中学年から(市川里美画、R.B.ウィルソン文、さくまゆみこ訳、1800円)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「スモンスモン」(岩波書店)

 ゴンゴン星に住むスモンスモン。トントンに乗って川を下り、ロンロンを収穫した帰り道、深くて暗いゾンゾンに足を滑らせてしまいます! 人とも虫ともロボットともつかない生物、意味不明の言語にとまどいつつ、圧倒的な存在感の絵に心を預けてしまいましょう。未知の世界を受け入れられたら、不思議にゆかいでやさしい気持ちが広がる、希少な味わいの新刊絵本です=4歳から(ソーニャ・ダノウスキ文・絵、新本史斉訳、1800円)

「きこえる?」(福音館書店)

 背景に溶け込みそうな色で、柔らかく浮かび上がるシルエット。薄水色にクリーム色。淡い藤紫にりんどう色。息を潜め、画面に目を凝らし、耳を澄ましたくなる。きこえる? 葉っぱの揺れる音。花の開く音。星の光る音。文は短くても、ゆっくりめくって。現れるページの変化に心揺さぶられます。幼児から大人まで、世代も国境も超えて、静かに気持ちを重ねられます=3歳から(はいじまのぶひこ作、1400円)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「の」(福音館書店)

 はじまりはコートを着た少女から。「わたしの お気に入りのコートの ポケットの中のお城の……」。「の」に導かれ、摩訶不思議(まかふしぎ)な世界を旅します。普段、何げなく使われている「の」。そのつつましやかな「の」がまるでリボンのように紡ぐ魔法。ああ、ずっと眺めていたい! 画面の中の「繋(つな)がり」は時に切なくなるような驚きも。「の」があるかぎり、人生はふくよかで終わりがないのです=小学校低学年から(junaida作、2000円)

「引き出しの中の家」(ポプラ社)

 大好きなウサギの人形ピョンちゃんのために、こまごまとした家財道具を作りしつらえた、引き出しの中の小さな家。やがてそこに「花明かり」と呼ばれる小さな人がやってきて……。時をこえて約束をはたす「花明かり」と2人の少女の友情が美しい日本語で語られます。些細(ささい)なものをいとおしむ気持ちを体現したような繊細なブックデザインも素敵です=小学5年生から(朽木祥作、金子恵絵、1400円)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2019年11月30日掲載