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村田沙耶香「コンビニ人間」他 竹内洋さんが選ぶ平成のベスト本5冊

 (1)村田沙耶香著『コンビニ人間』(文芸春秋、2016年刊) ロボットの極北はロボットの人間化であるAI。人間の極北は粛々と歯車化する人間のロボット化=「コンビニ人間」。「私はいろんなことがどうでもいいんです」と、「世界の歯車」になりきり「正常」と「普通」を担保しようとするコンビニ店員古倉恵子。不気味な人間類型の誕生をほのめかす。

 (2)吉川徹著『日本の分断』(光文社新書、18年刊) 団塊世代が現役の頃は高卒が多数派。高卒が大卒と中卒の蝶(ちょう)つがい役になった。今は大卒と非大卒が半々。「大卒」民と「非大卒」民の分断社会の到来を明言し、「大卒層だけをみている社会」に警鐘を鳴らす。

 (3)筒井清忠著『戦前日本のポピュリズム』(中公新書、18年刊) ポピュリズムは日比谷焼き打ち事件に端を発し、日米戦争に駆り立て、今につながっている。近年の現象ではないのだ。

 (4)佐藤卓己著『八月十五日の神話』(ちくま新書、05年刊) 8・15=終戦記念日をわれわれの記憶に深く根付かせたものは? 国民感情の古層脈と戦前からの8月ジャーナリズムがたぐり寄せられる。

 (5)小熊英二著『1968』上下(新曜社、09年刊) 東大安田講堂攻防戦は、著者6歳の時。膨大な資料から時代の空気と気分を浮かびあがらせる。近代の終焉(しゅうえん)と現代のはじまりをみる。上下計2102頁(ページ)、2650g。=朝日新聞2019年12月4日掲載