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北原真理さん「紅子」インタビュー 天真らんまん、満州が舞台の冒険小説

作家・北原真理さん

 1944年、太平洋戦争末期の満州。関東軍の統制は乱れつつあり、馬賊が横行した。北原真理さんの冒険小説『紅子(べにこ)』(光文社)は、まっすぐで天真らんまんな日本人医師、吉永紅子が関東軍からかっさらった偵察機で単身、馬賊のもとに乗りつける場面から始まる。

 紅子が馬賊に依頼したのは、誘拐された現地の子どもたちの救出だった。首領らは、巨額の報酬と引き換えに依頼を受けた。一方、満州建国の黒幕で、紅子の後ろ盾でもある甘粕正彦が隠し持つ金塊を巡り、関東軍にきな臭さが漂い始める。

 旧満州には、祖母が住んでいたことがあって、もともと興味があった。太陽が沈むとき、ふわっと大きく見えたと思い出を聞いた。

 小松左京『復活の日』に衝撃を受け、「会えるかもしれない」と小松左京賞に応募したのが執筆活動のきっかけ。2017年に日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞したデビュー作『沸点桜(ボイルドフラワー)』は、新宿の裏社会から逃れようとする女性2人を描いた、また筆致の違うシリアスなハードボイルド小説。本書が2冊目だ。

 馬賊も関東軍も翻弄(ほんろう)する紅子は、「軍の規律や日本人社会の慣習、不文律をことごとく無視し、ひたすら己の信ずるところのみを追求」する。どんな目に遭おうとも信念を決して曲げず、素手でクマさえ倒しつつ驀進(ばくしん)する。

 「いま、世の中ってわりと暗いですし、学校でもカーストがあったりしてあまり自由に自分を出せない。枠組みに縛られないで、自由に元気に明るく、そういうものが書けたらいいなと思う」(興野優平)=朝日新聞2019年12月11日掲載