女性が政治から締め出されてきた状況に、政治学はどう向きあうのか――。今秋『女性のいない民主主義』(岩波新書)を出版した前田健太郎・東京大准教授と、ジェンダーと政治の研究を手がける三浦まり・上智大教授が都内で対談した。
同書では、古典的な「民主主義」の定義を女性参政権の観点から検討するなど、政治学をジェンダーの観点から洗い直した。「民主主義は市民の意見が平等に政策に反映される政治体制だ」というのは標準的な定義だ。しかし各国がいつ「民主化」したかを考える際、女性参政権の有無は考慮しないなどゆがみが生じがちだったという。前田さんは「政治学者は男性が多く、定義に忠実でないことに気づかなかった」と話した。
三浦さんは「参政権の平等から意思決定の場での男女均等へ、定義はアップデートされてきた」と指摘。「女性は必ずしも女性を代表しない」と批判されることがあるといい、「女性政治家が増えた先に豊かな政治を生むには、政治家と市民社会の女性の間の回路作りが重要だ」と話した。(高重治香)=朝日新聞2019年12月18日掲載