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「こんなにも面白い万葉集」書評 初心者でも心配ご無用

評者: 諸田玲子 / 朝⽇新聞掲載:2020年01月11日
こんなにも面白い万葉集 著者:山口博 出版社:PHP研究所 ジャンル:日本の小説・文学

ISBN: 9784569845500
発売⽇: 2019/10/25
サイズ: 19cm/236p

こんなにも面白い万葉集 [著]山口博

 昨今、注目をあびている万葉集なれど、いざ手に取ってみるとどうもとっつきにくくて……と、とまどうむきも多いと思う。そんな初心者でも本書なら心配ご無用。なにしろ面白い。
 「パワハラだって、そんな事くそくらえだ。(中略)酒だ、酒、酒!」「これはまあ、万葉集最高のオノロケ。御馳走(ごちそう)様」「イバラに絡みつく蔓(つる)のように、夫に絡まりすがりつき、声を振り絞って『行っちゃいや』と絶叫する妻。その妻をむりやり、むしり取るように、引き離して旅立つ夫」「まさに無常というべきか無情が相応(ふさわ)しいのか、ムジョウな世の中じゃなあ」。なんて解説に思わずクスリ。それでいて著者の縦横無尽な知識に導かれ、いつしか大昔にタイムスリップしている。
 「酒の席」「宮仕え」「政争」「弱き者」「防人」「男と女の間」そして「老境」の全7章。万葉歌をしみじみ味わえば、いつの世も人は変わらないナと嬉しくなるはずだ。