不確かに揺れ動く感情が行き着いた先は、最高にピュアなキス!(井上將利)
無事に冬休みから社会復帰を果たしまして、今年も「BLことはじめ」を皆様にお届けします!
2020年最初のテーマはキスシーン! どうやら今年は去年より突っ込んだ切り口が増える予感がしますね!?
今回ご紹介するのは「たゆたう種子」(ホーム社/集英社)。柔らかで穏やかな印象でありつつ確かな“目ヂカラ”を持ったキャラクターたちが魅力的な中陸なかさんの初コミックス作品です。
生物の補習授業を受ける高校2年生の葉純夏芽と根井柊都、そして生物の教師である木庭(こば)先生を中心に描かれていく本作。葉純は1年生の頃から木庭先生に密かな好意を寄せていて、補習で先生を独り占めするためにテストでわざと赤点を取り続けていたのですが……今回は補習が二人? もう一人の出席者、根井柊都は赤点でもないのに自主的に受講するという変わり者で困惑を隠せない葉純。
そして翌日、葉純は根井に呼び出されうっかり先生の事が好きという事実を知られてしまうのでした。誰にも言えない秘密を知られ取り乱す葉純、ところが根井も先生のことが好きだと言ってきて……⁉︎
今まで先生を眺めることしかできなかった自分とは違い好奇心旺盛に平然と距離を縮めていく根井。これまで誰よりも先生のことを知っていると思っていた葉純にとって、根井は突如現れた異質な存在であり、嫉妬を覚えるのでした。
突如始まった三角関係。けれども葉純と根井はライバルとしてぶつかる訳ではなく、それぞれが自分の感情を静かに抱えたまま過ごしていくのが面白いところ。
そして補習授業の最後に花壇に植えたチューリップの面倒をみるため、葉純と根井は一緒に過ごすことが増えていき徐々に打ち解けていくのでした。
特に葉純が電車に乗り遅れた根井を気にかけて待っていたり、何気ない会話で「今、あいつと同じことを考えてた!」みたいなほっこりしたりする場面が続き、二人の距離がぐっと近づいていく様子を眺めるのは最高でした!
そして、それまで二人が先生に向けていた感情が先生との会話を契機に、いつの間にかお互いに向き合っていることに気付くのでした。
さて、ここまで肝心のキスシーンに一切触れていない訳なんですが(笑)、葉純と根井が最後にどんなキスをするのか。それは“先生の過去”という物語のキーワードが関連すると同時に読者への最大のご褒美だと思うので、あえて語らず皆様の妄想を膨らませることにいたします!(それはそれは最高にピュアなキスですよ!)
葉純と根井のゆらゆらと揺れる不確かな感情はまさに「たゆたう種子」そのものであり、彼らの想いがどのように芽吹いていくのか。ぜひ読んで頂きたい1冊です!
孤独な大人同士、探り合いながらのキスがエモい!(キヅイタラ・フダンシー)
遅ればせながら、あけましておめでとうございます! 2020年も趣味全開でBL作品の面白さをお伝えしたいと思っていますのでよろしくお願いします~。そんな新年1発目のテーマは「キスシーンが最高なBL」ということで、また1作品を選ぶのが悩ましいところですが、こちらの作品を激推しさせていただきます!
CTKさん「ミッドナイトレイン」(リブレ)。
借金を返し続けるだけの日々に絶望し、死にたがっている男・イーサンと、目つきが悪くケンカっぱやい一匹狼な性格が故に危険な仕事に手を出し、死にかけながらも生きたがっている男・マイクの物語。……もうこの設定がいいですよね!(笑)
とある町のランドリーで出会った二人。人懐っこいイーサンは積極的にコミュニケーションを取りにいきますが、ぶっきらぼうなマイクは「キモい」と一蹴。でも何だかんだ名前を教えてくれるところが根は悪い人じゃなさそうです。そんなきっかけから1週間経った深夜、自分の背負った借金の大きさ、繰り返される返済の日々、返し終わった先になにも見えない人生にうんざりしていたイーサンのもとに、傷だらけのマイクが訪れたのでした。
手当てをしているとき、無防備に介抱されるマイクの扇情的な表情に堪えきれない衝動を覚えたイーサンはつい手を出してしまいます。ずっと孤独だったマイクは、イーサンの優しさや好意に期待をしてはいけないと家を出ますが、他とは違うイーサンなら自分のことを受け入れてくれるのでは、と再びランドリーに足が向かい……。再会して気持ちの通じ合った二人のキスがこちら!
まさかのマイクからのキスです(笑)! 孤独を抱えた二人の大人の男の、探り探りに確かめ合うような、切なげな表情のキスがとってもエモい……! 優男なイーサンのギラついた視線のセクシーさや、口の悪いマイクが恥じらっているところも素敵ですね~。
刹那的な感情で求め合った二人、自分たちの抱えるしがらみに向き合いながら、一緒になっていくストーリーがとても良かったです。雨ばかり降る、夢も希望もなさそうな町で、世界から爪弾きにされていた二人の男が、足りないものを埋め合うように惹かれ合ったのかもしれないですね。
あと個人的にはマイクのツンデレっぷりというか、強気ぶってるのに実は気遣っていたり照れたりするところがツボでございました……(笑)。キラキラやロマンティックさは無いですが、オトナな恋愛を楽しめる作品、おすすめです!
目が眩むほどの純度200%のキスにきゅんきゅん♡(貴腐人)
すっかり松もとれておりますが、新年初ということで明けましておめでとうございます。
新年早々お付き合いいただきありがとうございます。今回のお題は「子年でチュー♡ キスシーンが最高なBL作品」。これまた作品選びに頭を抱えるお題でして。BL界には素敵なキスシーンはいっぱいあるのよ(泣)。でも選ばなければなりません!
ということで、厘てくさんの「兄の親友お嫁においで」(大洋図書)です。
アラサーの会社員・井上真樹(まさき)は、幼馴染の親友・小川 青(じょう)から結婚の報告を受けた帰り道で交通事故に遭い、利き腕を骨折し身の回りのことが何もできない状態に。その状態を見かねた青が「兄弟のアイに掃除させに行く」と言ってくれ、それを有難く受けることになりました。真樹はアイのことは髪の毛を編み込みしたりして可愛がっていた6歳のちっちゃな女の子のイメージしかなく、女子高生になったアイちゃんに会えるのを楽しみにしていたら、暗闇の中からやって来たのは、長身イケメン!
実はアイちゃんは男でした。真樹、いくら可愛いとはいえ親友の弟やぞ。フツー気が付かないか? あのデレデレの可愛がりっぷりを見ると青が「弟」と言ってても脳内で「妹」に変換されてたやろ。絶対に脳内変換されてるね。
イケメンに育ったアイちゃんこと藍くんは、子供のころから真樹一筋。ひたすら思い続けていたという健気さ。再会したばかりの時はワイルドさを出していたし、お風呂場で体を洗っているうちにムラムラきて、首筋に噛みつくようなキスをするから遊び慣れているのかと思いきや、純情青年。
バイト代に「ほっぺにキス」を要求したり、キスをしたらしたで「オトナのキス」の仕方を知らない! 絶対DT(童貞)よね。子供の時から真樹一筋だもん、DTじゃなきゃおかしい。真樹とのキスがファーストキスかもしれない。
きゃあああああ、もうもう甘酸っぱすぎる。ぎこちないキスにきゅんきゅんきちゃう。腐ったオトナでごめんなさい! という気分になってきます。
両想いになってイイ雰囲気でイキオイのままDT卒業か! と思いきや寸止め!(真樹が)
「付き合ってないから、がまんしなきゃ」と頬を染める藍。
何コレ。何このピュアさ。眩しいわ。目がつぶれちゃうほど眩しいわ。
そして18歳になった0時過ぎにまたもや真っ暗な真樹の部屋へ。暗闇からいきなり現れた藍にびっくりしている真樹に小さなブーケを差し出し跪いてプロポーズ。いやああああああああ~! 王子様~~~。ゴロンゴロン転がっちゃう~~~~♡♡
今度こそ、今度こそ祝!DT卒業! おめでとう!藍! これからの藍はどんどん男っぷりが上がっていくんだろうなぁ……。
どんなに男っぷりが上がっても真樹への愛は変わらないんだろう、と思えるラストでした。
腐ったオトナの乙女ゴコロがきゅんきゅんしちゃう、いろんな「愛」が詰まった作品です。トキメキたい方、ぜひご一読を!