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「三ツ矢先生の計画的な餌付け。」 原作とドラマを萌え語り! 美味しい料理が心をつなぐ年の差BL

©「三ツ矢先生の計画的な餌付け。」製作委員会・MBS

胃袋も心もつかむ、料理×BL作品

岩本:この夏、実写ドラマ化されるBL作品が多いですよね。その中でも今回、我々が気になった作品が、松本あやかさんの『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』です。

【あらすじ】
若手編集者の石田友也。野球の経験を買われスポーツ誌の編集となったが、異動で慣れぬ女性誌に……。そこで一時的に担当することになった料理研究家「三ツ矢先生」は京都弁のひょうひょうとしたキャラクター、同性愛者を公言する人気タレント。緊張する友也だったが、気安くふるまわれる三ツ矢の料理にすっかり胃袋を掴まれる。さらに友也を見つめる優しい視線、朗らかな人柄、時折見せるかわいさに、どうしようもなく惹かれてしまい――!?
『三ツ矢先生の計画的な餌付け。1』(ぶんか社)作品紹介より

岩本:「料理」と「BL」という掛け合わせは、かなり鉄板というか、強いですよね。

井上:そうですね。食欲がわいて気持ちも満たされるBLなので、夏バテにはピッタリです!

岩本:たしかに。毎回、友也が胃袋をつかまれたように、読んでいる我々も胃袋をつかまれるというか、お腹が空くという飯テロに遭うわけですけれど。

井上:やっぱり料理をキーに2人の関係がつながっていくんですけれど、そういう描かれ方が読んでいて物語に入りやすいですし、お話のネタ的にもいろんなバリエーションが期待できて楽しめます。

岩本:「餌付け」っていうタイトルから想像すると、ちょっとディープな印象を受けるところもありますけど、料理がカギになっているというところもあって、けっこうほのぼのしているお話で、まさに“BLことはじめ”な方にもおすすめの作品ですよね。

井上:そうですね。あと、やっぱり2人のキャラクター設定がBLをはじめて読む方でも親近感がわいて、すごく読みやすい気がします。

松本あやか『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』(ぶんか社)

岩本:原作を読んでグッときたところってありますか? 私は1巻の前半に出てきた三ツ矢先生の言葉で、「明日も機嫌よぉ健康でいられますようにっていうおまじない 僕にとっての料理はそういうもんや」というセリフがとってもいいなぁと思って。ていねいな暮らしじゃないですけど、自分のためのおまじないとして料理をするってすてきだなぁと、身に沁みました。

井上:けっこう、この場面が物語のいちばん大事なカギという感じですよね。僕もすごくいいセリフだなと思いました。そして、その言葉を言っている三ツ矢先生の一枚上手感というか安心感もいいですよね。

岩本:たしかに。年もかなり年上の設定で、四半世紀くらい年上で。

井上:イケおじですよね。嫌味っぽくなく大人なキャラクターで、友也を手のひらで転がしているかのような余裕もあって、そういう関係性が最初のつかみとしてすごく面白い。

岩本:他に井上さんの心に残った名場面は?

井上:やっぱり料理や食事が重要な要素なので、それに関係する場面が印象的です。先生が作った料理を友也が食べたり一緒に食べたりするっていうのも場面としてはあるんですけど、特に印象に残っているのが先生と友也がはじめて一緒に料理をするお話。たしか、カツ丼だったかな。2人の関係性が今までは「作る人」と「食べる人」だったのが、「一緒に作って食べる2人」という、ちょっと特別な感じになっていくんですよね。

岩本:たしかに料理を介して、2人がどんな関係、つながりなのかが変わっていく様が描かれていますよね。友也が三ツ矢先生にお粥を作ってあげる回もあって、最初は作ってもらう側だった友也も少しずつ成長していく、変わっていく感じもいいです。

井上:先生を看病する回ですね。相手が料理研究家っていうのもありますけど、自分が好きな人のために作った料理を「美味しい」って言ってもらえるのはめちゃくちゃうれしいですよね。

岩本:そうですね。豪華な料理じゃなくて簡単なものでも、そういうふうに言ってくれるだけで言葉が心に沁み入ります。

井上:やっぱり、そういう心の距離感みたいなものが表れているし、2人の距離が縮まっていく過程が料理を通して描かれているっていうところがすごい面白いポイントだと思います。

ドラマキャスティングの妙

岩本:この作品がけっこう意外なキャストでドラマ化されるっていうのにビックリしましたよね。三ツ矢先生役がミュージシャンの山崎まさよしさん、友也役が若手俳優の酒井大成さん。

©「三ツ矢先生の計画的な餌付け。」製作委員会・MBS

井上:いやぁ、驚きましたよね。

岩本:山崎まさよしさんがBLの実写ドラマに出るっていうのが、数ある夏のBLドラマの中でもかなりのインパクトでした。これは見逃せないぞって。山崎まさよしさん、ハマってましたよね。

井上:いま僕たちが話している時点では2話まで放送されていて序盤ではあるんですが、山崎まさよしさんが演じているというよりかは、三ツ矢先生になっているという感じで、正直、自然すぎて怖いと思いました(笑)。

岩本:いいキャスティングですよね。

井上:本当に、すごくいい意味で普遍的な「いいおじさん」を演じているんですけど、声がやっぱり山崎まさよしさんなので耳ざわりもよくて、それがまた幸せなんです。

岩本:しかも京言葉っていうところが、また強い!

井上:あと、友也役の酒井大成さんもすごくパワフルで、友也のキャラクターにぴったりのエネルギッシュな感じがいいんですよね。

岩本:友也は元球児という設定で、猪突猛進な感じですもんね。

井上:あと、顔がびっくりするくらい綺麗。彫刻みたいで、すごく仕上がっている(笑)。 

岩本:その整った顔の彼が、慌てふためいてワチャワチャしているのがいいですよね。

井上:眉間にすごい皺が寄っちゃっていたりするのも可愛いです。

岩本:可愛いといえば、ドラマ1話で三ツ矢先生の家にはじめて原稿を受け取りに行った友也が編集者として頑張っていくと決意表明するシーンが好きです。食後に出されたミントウォーターを前に、「頑張ります!」ってお辞儀をしたら勢い余ってミントが鼻の頭にくっついちゃうっていうのがめちゃくちゃ可愛い! これはドラマならではの演出で、ミントいい仕事したなって思いました。

©「三ツ矢先生の計画的な餌付け。」製作委員会・MBS

井上:たしかに! 原作だと、友也の口のまわりに食べかすがついていて三ツ矢先生が取ってくれるという、唐突な“あごクイ”でやられるっていうところですよね。原作の序盤のいいシーンだったので、ドラマではそこはどうなるんだろうなと思いながら見ていた中でのミントだったので、「ミントで来た!」って思いましたよ。その手があったか、と(笑)。

岩本:そのミントがついている顔がめちゃくちゃ可愛かった!

井上:ちょっと犬っぽい感じでね。

岩本:そうそう。ワンコ系な感じがして、より可愛さが増して見えましたね。

井上:2話で、ライバル社の編集者が三ツ矢先生と一緒にいるところを目撃した友也の妄想が爆発していたのも面白かったですね。原作ではあっさりと描かれていたのに、ドラマではけっこうディープに描かれていて。ライバル編集者と三ツ矢先生がステーキを焼きながらイチャイチャするっていう(笑)。そういう原作とは違った展開をしていく場面もあって、原作を読んでいる身としては次はどういうふうになるんだろうってワクワクします。

岩本:そうですね。原作では1話ごとに料理が出てきて、わりとゆっくりと進行していきますけど、ドラマではいくつかのお話をうまく融合させて1つのお話にしているところもあるので、その違いを楽しみながら見るのもいいですよね。ドラマでは、友也が編集者として成長していく姿も今後見られるのかなと思うので、そこも楽しみです。

BL萌え語りを音声でも!