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瀬奈じゅんさん、千田真司さん「ちいさな大きなたからもの」インタビュー 手探りの「愛している」

瀬奈じゅんさん(右)と千田真司さん=冨田むつみ撮影

 「血のつながりがなくても家族になれるんじゃないかな」。瀬奈じゅんさんは2012年に38歳で千田真司さんと結婚。不妊治療に励んでいた時、実の親と暮らせない子を救済する「特別養子縁組」について夫から初めて聞いた。瀬奈さんは「あなたの子どもが欲しいから、私はがんばっているのに!」と思いをぶつけた。

 不妊治療は2年半に及び、7回の体外受精をしたが、子宝には恵まれなかった。「長いトンネルの中にいるようだった。私、何やってるんだろう。妊娠がゴールじゃないんじゃないかと思った」と瀬奈さん。制度について調べ、様々な事情で「社会的養護」が必要な子が約4万5千人もいると知った。夫婦で話し合い、「一人でも救えるなら」と、特別養子縁組で生後5日の男の子を迎えた。戸籍上も親子となった。

 17年の初対面の日。千田さんは「僕たちの方が救われたと思った。貴くいとしい感じでした」と言う。夜中も交互に起きて、ミルクをあげた。今は2歳になった。息子には養子であることを、少しずつ伝えている。千田さんは入浴時などに「血がつながっていなくても家族なんだ、愛している」と話しかける。「言葉に出すとドキッとする。息子は意味は分からないのに、真剣な顔をします」。瀬奈さんも「『ママはあなたを産んであげられなかった。あなたを産んだお母さんがもう1人いるんだよ』と話しています。2人のお母さんが愛したから、この世にいるということを伝えたい」。

 特別養子縁組の成立件数は18年度は624件で、08年度の309件から倍増した。本書では「特別養子縁組が新しい家族のひとつのカタチとして、特別視されない世の中になってほしい」とつづり、2人は啓発活動にも力を入れる。「子を育てながら私たちも育てられています」(文・山根由起子、写真・冨田むつみ)=朝日新聞2020年2月15日掲載