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軽やかなやりとりでゆる~く 「ねこと王さま」など「子どもの本棚」オススメ3冊

「ねこと王さま」

 かしこいねこと、のんびりした王さまとの遊び心がいっぱいつまったゆかいなお話です。

 むかし王さまは友だちのねこや12人のめしつかいたちと一緒にお城でしあわせにくらしていました。ところがある日、火をふくドラゴンがやってきてお城が燃えてしまいます。そしてあたらしい住まいを「おしろ横町」に見つけた王さまは、ねこに教わりながら今までしたこともなかった買い物や皿あらいなどにチャレンジし、いろんなことが少しずつできるようになっていきます。

 王さま思いのねことの軽妙なやりとりは面白く、わくわくしてきます。また、このおはなしの世界がかもしだすゆる~い雰囲気にユーモラスな絵がぴったり合っていて楽しめます。(ニック・シャラット作・絵、市田泉訳、徳間書店、税抜き1600円、小学校中学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「さくらの谷」

 風は冷たいが山には春の気配が感じられる3月のある日、「わたし」は満開の桜にうめつくされた深い谷にたどり着く。楽しげな歌に誘われ奥に進んでいくと鬼たちが花見をしている。一緒に遊ぶうちにいつしか鬼たちの姿はなく、なぜだか、もうこの世にいない懐かしい人たちの気配がするのだった。

 桜の花の圧倒的な多幸感! 亡き人を思い返すと、そこにあるのは悲しみではなく、共に過ごした色あせることのないあたたかな時間だ。大切な人がいつもそばにいてくれるような気持ちになれる本。(富安陽子文、松成真理子絵、偕成社、税抜き1300円、5歳から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

「テツコ・プー ふうせんになった おんなのこ」

 朝から不機嫌でふくれっつらのテツコ・プー。弟をつねって怒られると、カーテンに隠れて出てきません。いつまでもプーッとしていたら、体が風船みたいにふくらんで、窓から空へ飛んでいきます。言葉で説明できない幼い子どものもどかしい気持ちに共感し、軽やかな線とユーモラスな言葉ですくいあげる作者。16年ぶり、待望の創作絵本です。空の上でじたばたしつつも自分を曲げない、ごうじょっぱりの女の子が、やっと浮かべる少しだけの笑顔。気持ちがほぐれる読後感です。(児島なおみ作・絵、偕成社、税抜き1400円、4歳から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】=朝日新聞2020年2月29日掲載