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くどうみやこさんが教える「子どものいない女性の生き方」 いろんなライフコースがあることを知って

文:渡部麻衣子、写真:家老芳美

子どもがいない女性の実態を知りたくて

――くどうさんは、なぜ子どものいない女性に着目したのでしょうか。

 私は42歳のとき子宮の病気を患ったことで産む可能性が断たれ、子どものいない人生が確定したのですが、そのときに「子どもがいない人生ってどんな人生になるんだろう」と本やデータを探してみたのがそもそもの始まりです。

 「子どもを産まない」と「もう産めない」は大違いで、当時はものすごく落ち込みましたし、もっと早く妊娠について考えておけばよかったと後悔もしたけれど、いつまでも下を向いてはいられないじゃないですか。だから前向きな生き方を模索したかったのに、参考になる資料が全然見つからなかった。

 そこで、まずは子どものいない女性に15人ほど集まっていただいてお話を聞いてみることにしました。一人ひとり順番にこれまでの経緯と今の気持ちを話していったのですが、「つらい」「今まで誰にも話したことがなかった」と涙ながらに打ち明ける姿に衝撃を受けました。

――思ってもみない展開だったのですか?

 「これからの人生どう生きていくか、明るく話しましょう!」という感じになると思っていた私が浅はかでした。身近に子どもがいない女性がいても、なかなかその理由を踏み込んで聞く機会はありませんよね。私も、デリケートなことだし興味本位で聞くものではないように思えて、当事者になるまでは誰にも聞いたことがなかった。でも、口にしないだけで、実際はそれぞれに悩みやモヤモヤがあったんです。

 7年前の当時ですら既に未婚化、晩婚化、少子化は進んでいて、パートナーの有無に関わらず子どもがいない女性の数は明らかに増えていたのに、そういった女性の声を集めた本やデータがほとんど無いのは、ちょっとおかしいですよね。それで、自分で女性たちの声を拾い集めてまとめたのが2年前に出版した『誰も教えてくれなかった 子どものいない人生の歩き方』でした。

社会が変わらないと、生きづらさはなくならない

――子どもがいない女性の気持ちや、子どもがいない人生を前向きに生きる女性たちのエピソードが細やかにつづられた前作は、テレビや新聞でも取り上げられ、大きな反響を呼びました。 

 「子どもができなくて悲しいのも、誰かをうらやんでしまうのも、すぐに立ち直れないのも当たり前。みんなもそうだし、口にしていいんだよ」。この思いを多くの人に届けられて安堵すると共に、反響の大きさに、こんなにたくさんの声が社会に埋もれていたのかと驚きました。

 実は、本を出すこともすんなり決まったわけではありません。主婦の友社さんとはご縁があってお話が進みましたが、「これまで子どもがいない女性向けに書かれた本がなかったのは、ニーズがないからでは?」と難色を示されることがほとんどでした。子どもがいない女性が胸の内を吐露できる場所はとても少なくて、同性の女性からですら、「この少子化の時代に産まないってどうなの?」と非難されることもある。想像以上に世間の風当たりは強いと感じました。

 子どもがいない人たちがどんなに前向きになろうとしても、社会が「子どもは産んでも、産まなくてもいい」という雰囲気になっていかないと、生きづらさは変わりません。“声が聞こえない=社会に存在しない”になってしまうので、当事者だけで情報を共有するだけでなく、広く社会に声を届ける必要があります。

 前作は子どもがほしくても授かれなかった女性に向けて書きましたが、今回の『誰も教えてくれなかった 子どものいない女性の生き方』は立場の異なる人にも読んでほしかったので、積極的に子どもをもたないという選択をした人のエピソードや、子どもがいる女性の幸せに関する意識調査の結果にも触れました。

ロールモデル不在の時代を生きるミドルエイジ

――男性と女性とでは、子どもがいない人生の受け止め方は違うものなのでしょうか。

 執筆にあたり男性にもお話を聞きましたが、やはり女性の方が苦しみは深いと感じています。30歳なのか、35歳なのか、40歳なのか。人によって意識する年齢は違っても、“産む側の性”である女性は、どこかのタイミングで自分は子どものいる人生なのか、そうではないのかを考える。「産むための臓器が備わっているのに、使わずに死んでいいのか」という思いが頭をよぎったりもします。

 たとえば不妊治療を受ける場合も、男性なら性機能障害や無精子症といった体の問題があっても治療によって子どもを授かれる可能性がありますが、女性は代理出産しか道がなくなってしまうこともありますよね。そういったことも、女性の方が多くモヤモヤを抱える一因だと思います。

1冊目のイラストはアンニュイな雰囲気、2冊目は前向きに人生を育てていく意味合いをもたせた

――くどうさんは、7年前から子どもがいない女性を応援するための活動「マダネ プロジェクト」を続けています。

 プロジェクトの一環として、子どもがいない女性が気持ちを自由に話せる場を提供してきました。参加者の年齢は様々で未婚・既婚も問いませんが、一番多いのは45歳前後の、“誰も教えてくれなかったこと”が多い世代です。

 いま40代、50代の女性は、自分の母親を人生のロールモデルとして見て育ちました。結婚して子どもを産んで、子育てが一段落したらパートに出る。昔はそれが王道で、女性の生き方の見本は一つでした。

 でもそんなミドルエイジが社会人になる頃には男女雇用均等法が施行されていて、仕事と育児を両立するコース、独身で仕事に励むコース、結婚しても子どもはいないコース、母親世代同様子育てメインでいくコースなど、女性のライフコースの枝分かれが始まりました。事前にどのコースがあるのかも、そのコースにどんなメリット・デメリットがあるのかも教えてもらえず、ロールモデル不在の時代を“生き方多様化第一世代”として生きることになったのです。

――2012年にNHKで放送された番組で「卵子も老化する」という事実を知り、衝撃を受けた女性は多かったと聞きます。

 自分も母親のようにいつかは産むのかなぁくらいの感覚でいたのに、突然、「卵子も老化します」「35歳過ぎると妊孕性がグッと下がります」という事実を突きつけられたら、愕然としますよね。

 今は若い女性向けの雑誌でも妊活に関する記事を見かけますし、タレントさんが不妊治療をしていることを公言することも珍しくないですが、ミドルエイジは当事者にならない限り不妊や妊娠に関する情報は得られないのが普通でした。学校でも会社でも、誰も教えてくれませんでしたから。

 「これからは女性も働いて!」というのでがんばって働いてきたら、「出生率も下がってるから、働きながら子どもも育てて!」と言われる社会になってしまった。女性活躍推進といいますが、それは子どもを産んだ女性がいかに働きやすい社会にするかという話が主で、子どもがいない女性はそこから抜け落ちてしまっている。「不妊治療を限界までがんばったけどダメだった」なら仕方がないけれど、「なんとなく産まなかった」「最初から産む気がない」は許されないムードがあるから、肩身の狭い思いをするんです。

後ろ向きな気持ちを前向きに切り替えるには

――子どもがいないことで気持ちが塞ぎがちなときに、前向きになるにはどうしたらいいのでしょうか。

 まずは誰かに話して、自分の中に閉じこめていた気持ちを解放してあげる。それから、他の人の話を聞いてみるのがいいと思います。子どものいない人生を歩んでいる理由は人それぞれです。自ら選んだ人もいれば、パートナーの協力を得られなかった人もいるし、不妊治療の効果があがらなくて断念した人もいる。様々な見方や考え方に触れると視野が広がって自分を客観視できるようになるし、モヤモヤしているのは自分だけじゃないという安心感も得られます。

 あとは、感情の揺れに名前をつけてあげることも大切です。たとえば不妊治療中、「友達とも会いたくなかったし、よその子どもを見るのもつらくて泣いてばかりいた」なら、それは“未産うつ”。「子どもについて気持ちの温度差があり、夫との関係がぎくしゃくしていた」なら、それは“未産クライシス”だったのかもしれない。

 “未産うつ”や“未産クライシス”の定義は本に詳しく書きましたが、その視点で自分の心の状態を振り返ると、「あ、もうこの時期は抜けたな」と認識できて、気持ちも前向きに切り替わっていきます。

――どうしたら生きづらさを感じずに済むようになりますか?

 子どもがいてもいなくても、未婚でも既婚でも、働いていてもいなくても、本来そこに優劣はありません。自分の人生なんだから、生き方は自分の好きに選んでいいはずです。少子化は確かに大きな社会問題ではありますが、子どものいない女性が肩身の狭い思いをしなければいけないのは、やっぱりおかしい。

 多様化社会を掲げているのに、男はこうあるべき、女はこうあるべき、という旧価値観を引きずっているから生きづらいんです。家事も育児も性別にとらわれず得意な方がすればいいし、男性が専業主夫になってもいい。女性も男性もみんなが堂々と、自分らしく生きられる社会に変わっていけば、生きづらさは少しずつ緩んでいくと思います。

子どもを産めなかった人生は不幸なのか

――くどうさん自身は、子どもがいない人生をどう受け止めていますか?

 私はもう子どもがいない人生が確定して、60歳、70歳になっても子どもも孫もいない人生です。31歳で結婚してからも仕事に明け暮れ、妊活について考えずに産む機会を逸したことを悔やんでいた時期は遠い過去のものになり、今はこの先どんな風に生きたら充実した人生を送れるかを考えながら穏やかに暮らしています。

 もし今30代で、子どもがいる人生といない人生のはざまで迷っている人がいるなら、ライフコースをイメージすることがとても大切だと伝えたいです。産むか産まないかはどちらでもいいのですが、なんとなくボーッと生きていて、「え、もう産めない?」は後悔しますから。

 先日、就職を控えた女子学生に向けて、女性のライフコースについての授業をしたのですが、今の若い世代は産む・産まないを早くから意識している人が多い印象を受けました。とはいえ、計画通りいかないのも人生。産むつもりだったけど産めなかったり、予想外のタイミングで子どもを授かったりすることもある。別のコースに行くことになってしまったときのためにも、人生の選択肢をたくさん知っておくことは重要です。

 それに、いろんなライフコースを知るということは、自分とは違う人生を歩む人を尊重する気持ちも育みます。他者の立場に対する想像力を誰もが持てれば、本当の意味で社会は多様化して、みんなが生きやすい世の中になるのではないでしょうか。

――自分のライフコースについてよく考え、人生の選択肢を多く知っておくことが大切なんですね。

 たとえば子どもがほしい女性には、自分で産んで育てたい人と、自分で産むことにこだわらず育てたい人の二通りがありますが、後者の場合は養子を迎えることも選択肢に入れることができます。ただ、養子を迎えるにも年齢の問題があるんです。だいだい不妊治療に区切りをつけるのは、40代前半から半ばが多いと思いますが、養親の年齢上限を設定しているあっせん団体も多く、そこから養子縁組について考えても間に合わない場合があるのです。

 晩婚化が進んでいるので、最近は年齢などの諸条件が緩和されてきていますが、早めに知識を得ることが大切です。本では養子を迎えた女性にもお話を聞いているので、ぜひ参考にしてみてください。知識があることで人生の選択肢が広がって、新しい幸せの形が見えてくることもありますから。