本は自分にとって、どんなものだろう? 本好きなら一度は考えたことがあるかもしれない。千差万別の答えがありそうな問いに対して、この書店はその名で高らかに宣言する。「本は人生のおやつです!!」と。
JR大阪駅の南、オフィス街の一角にあるレトロなビルに入り、階段を上ったすぐ右手。書籍と雑貨が並ぶ10坪の店内は、一目で見渡せる。本棚はぐるりの壁と、平置きスペースのある「島」が二つ。奥から、店主の坂上友紀(さかうえゆき)さん(40)が小さなからだをのぞかせた。
なにゆえ「おやつ」なのですか?
「甘いものがめっちゃ好きな人にとっては、毎日食べないとどうにもならないものだし、疲れてても食べられる」。気軽に手にとってもらいたい、との願いも込めつつ、「いずれ『ご飯でしょ!』となってくれたらうれしいです」とも。
本好きの原点は、幼少期にある。生まれつき骨がよわく、入退院を繰り返す日々のなかで本に救われた。「ずっと部屋にいないといけないけど、本を読んでいると不自由感とかもぜんぶ忘れちゃう」。本に助けられた人生。その一生を捧げられる仕事を、と2010年8月に看板を掲げた。
小説や詩のほか、民俗学関連や美術書が目立つ。店内の7割を古書が占める一方、これと信じる本は絶版になるまで仕入れる。常連客が、ずっと店にあった本を手に取るとき、思いを新たにする。「すべての本が、誰かにとっての人生のおやつです」(山崎聡)=朝日新聞2020年3月25日掲載
売れ筋
- 『ほんまにオレはアホやろか』水木しげる著(講談社文庫) 著者の自伝的エッセー。「人生の枠を広げてくれた一冊。10年間で1千冊以上売っています」と坂上さん。
- 『国芳一門浮世絵草紙 俠風(きゃんふう)むすめ』河治和香著(小学館文庫) 浮世絵師・歌川国芳の娘が主人公の小説。