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新型コロナ影響、書店員不在の本屋大賞 本と書店の存在感いまこそ

書店員を招かず、実行委員会のみで開かれた本屋大賞発表会=実行委員会提供

 17回目を迎えた今年の本屋大賞も、新型コロナウイルス禍に見舞われた。7日に開かれた発表会は、賞を支える書店が迎えている、これまでにない試練を象徴する場となってしまった。

 発表会で恒例なのが、大勢の書店員が受賞作家を囲んで祝福する一幕だ。書店員が「自分が売りたい本」を投票で決める賞のハイライトといえる。だが、今年は実行委員会のみで開かれ、ユーチューブで動画が配信された。取材陣は入れず、『流浪の月』で受賞した凪良(なぎら)ゆうさんもビデオメッセージでの登場となった。

 輪を掛けるように、政府による緊急事態宣言が同じ日に重なり、大手書店が次々に一部休業を発表した。凪良さんは8日、「休業のお知らせをあちらこちらで見て胸が苦しいです。本屋さんは物語と読者さんをつないでくれる大事な場所。今は命と健康を守り、また元気に復活されることを信じて待っています」とツイッターで発信した。

 意気込んで大賞作品を仕入れていた書店にも、重苦しい雰囲気が漂う。そうはさせじと、兵庫県の出版社、ライツ社はネット上で「街の書店がやってる通販サイトまとめ」を公表した。ツイッターで1万回リツイートされ、広がっている。大塚啓志郎社長は「いろんな本に出会える楽しさは書店にしかない」と話す。

 本屋大賞実行委員会の浜本茂理事長は発表会で、「外出もままならない状況下でこそ本は力を発揮するはず」と話した。本屋大賞でも存在感を発揮してきた、本と読者をつなぐ書店の役割は、どこにも代わりが見当たらない。(興野優平)=朝日新聞2020年4月15日掲載