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アフターコロナの道しるべ 書評家・東えりかさんオススメの3冊

  • 高校生と考える日本の論点 2020-30 (桐光学園中学校・高等学校編、左右社)
  • 進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語(千葉聡、講談社)
  • 生きるための辞書 十字路が見える(北方謙三、新潮社)

 人から人への感染症は他人と一緒に生きていくことを許さない病である。新型コロナ禍は、今後の生き方を一変させる。ならば、アフターコロナを考え始めよう。その縁(よすが)になるかもしれない三冊を紹介する。

 『高校生と考える日本の論点2020―30』は桐光学園が独自で行っている「大学訪問授業」をまとめたものである。各分野の識者を招き中学1年生から高校3年生までの希望生徒に講義を行う。作家の沢木耕太郎、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明、現代美術家の会田誠らをはじめ21人が招聘(しょうへい)され、生徒たちの疑問に答える形で、専門分野について易しく語っていく。

 衝撃を受けたのは30代の社会学者、西田亮介の講義。西田はSNS時代の政治について設問を与え生徒たちに考えさせる。この回答がことごとく、今の政府の「先に法律あり」で緊急事態宣言の発出決定が遅いといった対応に当てはまる。アフターコロナは政治に無関心でいられるはずがない。

 今は大人も子どもも何を指針にしていいか分からない。ならば様々な先達の意見を真摯(しんし)に聞き、足元からその先を考えるときではないか。

 今回の感染症の怖さを知るにつれて、もっと数学と基礎科学を勉強しておけばよかった、という思いが募る。ウイルスの特性や伝播(でんぱ)の推移など専門家と共有したくても理解できないジレンマにかられる。

 『進化のからくり』はこうした知的欲求を満たしてくれた一冊だ。ダーウィンが提唱した「進化論」はそれ自体が進化を遂げ、分子レベルでメカニズムの解明が進んでいる。

 著者は進化生物学者で、カタツムリをはじめ、陸上の巻貝の研究を行っている。貝は右巻きか左巻きか、大きさはなぜ違うのかと、世界各地の研究者が小笠原諸島などの未踏の地に入り、協力し合っている様子には感動する。

 医学や科学、数学に興味を持つ幼い子にこの楽しさを教えたい。基礎科学は絶対に役に立つのだ。

 ほとんどの人が浮足だっている今、欲しいのは揺るぎない目印、道しるべだ。北方謙三は20年ほど前まで、「Hot-Dog PRESS」という青年誌で人生相談「試みの地平線」を16年間連載していた。「小僧ども」と呼びかけ、10代から20代の青年たちの悩みを一刀両断し、快哉(かいさい)を浴びていた。

 その青年たちも今や中年。仕事を持ち、家族を養い、趣味を楽しむ。しかしアフターコロナで大きな負荷がかかる世代でもある。『生きるための辞書』で、70歳を超えた北方謙三は今も変わらず生きる極意を授けてくれる。果たすためにすることはひとつ。生き残れ。=朝日新聞2020年4月22日掲載

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