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東野圭吾さん、森絵都さんら作品を電子書籍に 書店愛する作家ら、読者に届けるための葛藤

 ベストセラーを連発してきた作家の東野圭吾さんが、「白夜行」「容疑者Xの献身」など代表作7作品の電子書籍化を決めた。あくまで新型コロナ禍を受けた「特例」で、収束後に販売を続けるかは未定だが、「書店を守るため」と電子化に慎重な作家の代表格として知られるだけに、驚きが広がった。

 森絵都さんも、17日に文芸春秋から刊行した8作品の電子書籍を発売した。森さんには過去に電子書籍になっていた作品はあるが、今回は100万部を超えた「カラフル」や、直木賞受賞作「風に舞いあがるビニールシート」など代表作が並ぶ。朝日新聞の取材に文芸春秋を通じて出したコメントからは、読者への配慮と書店への愛着との板挟みになった苦悩がにじむ。

 「書店さんを応援したい気持ちは今もあります」としつつ、外出がリスクになっているなかで、「今まで思いもしなかった電子化のメリットを感じた」のだという。「読むものがほしい、でも買いに行けないという方たちに届いてほしい思いもあります」

 読者と作品の最大の接点である書店を作家が大切に思うのは当然だ。作家も読者から出発したわけで、ふるさとのような場所でもあるだろう。ただ、そもそも営業していない書店も目立ってきた。こうした決断を下す作家が増えてくるかもしれない。

 外出自粛の状況が長引けば、書店への打撃は致命的なものになり得る。例えば電子書籍の売り上げが、コロナ禍の間だけでも還元されるような仕組みは出来ないものか。突拍子もないかもしれないが、すでにありえない状況なのだ。書店が果たしてきた役割はあまりにも大きい。(滝沢文那)=朝日新聞2020年4月22日掲載