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犬山紙子さんが在宅増でも夫婦円満なワケ 「すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある」インタビュー

文:笹川ねこ 写真:扶桑社提供

1日2時間は「ひとりの時間」を

――新刊は、男性向けの週刊誌「週刊SPA!」の連載をまとめた一冊です。連載時は、どんな人に届けようとしていたのでしょうか。

 正直、最初は“自分のため”だったんですよ。私は、夫と仲良さそうに見えるとか円満っぽく見えると言われることが多かったんですけど、私は結構、怒りっぽかったり不安症だったり、夫のうつ状態があったりして、これを円満と言っていいのか、うちも問題あるよな…とずっと思っていたんです。この本は人付き合いの本でもあるんですけど、取材を通じて私が教えてもらったヒントや知見をシェアしたいと思ったんです。

――では、読者は男女問わず、どちらにも読んで欲しい、と。

 そうですね。だから私も「夫が」「妻が」というより「パートナーは」という書き方をして、夫であっても妻であっても、結婚していても事実婚だとしても、読みやすいように意識して書きました。

――今は、犬山さんもご自宅からテレビ出演されたりしています。外出自粛で、家族全員が家にいる日々だと思いますが、時間の使い方や役割分担など、工夫されていることはありますか?

 ひとりの時間も大切ですよね。いまはお互い1日2時間はひとりになる時間を持てるようにしています。今は保育園や学校もお休みの家庭が多い。そうなると本当にひとりの時間がないですよね。常に子供の面倒か、誰かと一緒の状態。だから私から「お互いちょっと休もうね」みたいな話をしたんですけど、今こんな大変な時に私がヘルニアになってしまって……夫に負担が大きくなっているのが心苦しいですね。

夫婦でカウンセリングを受けて気づいたこと

――犬山さんも夫婦でカウンセリングを受けられたそうですね。それまでは喧嘩も多かったのですか?

 私が一方的にイライラして、夫に説教するみたいな感じで、長時間愚痴っちゃったり、機嫌が悪かったり……。でも夫は絶対に反撃してこないし、言い返しもしないんですよ。夫は自分を責めてしまうことが多かったので、このままじゃ絶対ダメだって思っていたんです。夫を傷つけてしまうことへの自己嫌悪もありましたね。そんな危機感もあって、カウンセリングを受けようと思いました。

――カウンセリングを受けて、どんな気づきがありましたか? やっぱり友だちに悩みを相談するのとは全然違いますか?

 友人でも「傾聴をする」ということはできますし、それはとても大切なことです。しかし、臨床心理士の資格を持ったカウンセラーさんにはプロの知見があるのでもちろんそこは違います。もともと私は、友だちに相談できなかったんですよ。自分の弱いところを友人にも一切見せられないところがあって、自分の心の奥底にある弱い部分、みたいなものは隠して隠して……。

 臨床心理士のカウンセラーさんに、まず深く話を聞いてもらって、自分の幼少期の頃の話を初めて話したんです。守秘義務のある方に話を聞いてもらうだけでも効果があって、自分の考えがまとまってきたり、先生の指摘で「本当は甘えたいって言えずに、怒りで表現してる」って気づいたりして、自分を俯瞰できる一つの思考をもらえた感じがしました。

 そうして、やっと友人に本音を言えたり、パートナーに甘えてみたり、つらいときに頼ってみたりすることも同時にできるようになったんです。

犬山さんと、パートナーで漫画家・ベーシストの劔樹人さん

――パートナーで、漫画家・ベーシストの劔樹人さんはいかがでしたか。

 私が3〜4回受けた後に紹介して、別々に受けました。夫の問題点は、必要以上に自分を責めちゃう、自分に価値がないと思っちゃうこと。そう気づいたことで、「あ、そういうモード入っちゃったな」って俯瞰して、じゃあちょっと落ち着いてみよう、深呼吸して気持ちを整えてみよう、という発想が加わりましたね。

 まだ私もイラっとしてしまう瞬間はあるんですけど、「あ、イラッとしてるな。対処しなきゃ」と認められるようになり、リカバリーが早くなったんです。私がワーって一方的に言う頻度もめちゃくちゃ減ったうえに、そうなっても長引かない。冷静でいられるようになって、甘えられるようになりました。

どの夫婦も問題を抱え、乗り越えようとしている

――連載中は、どんな反響が寄せられましたか?

 第1話の漫画家の水谷さるころさんとパートナーは、コミュニケーションの取り方についてすごく話し合いをされていました。そもそも自分たちに合った話し合い方を考えなきゃいけないんだな、って学びが多かったですね。SNSでも大きな反響がありました。

 あとは、(元衆院議員の)宮崎謙介さんと金子恵美さんの回ですね。みなさん意外に思われたんだと思います。

――ふたりのラブラブっぷりに驚きました。実際にお会いして、偽りなく感じられましたか?

 本当にラブラブだったんです。失礼なことに、ふたりにお会いするまでは、なんで離婚しないんだろう? と勝手に思っていたんですよ。でもそういう風に世間に思われることや何か言われることは、金子さんたちにとって大きな負担になっていたんだ、と気づきました。

 不倫をして世間からバッシングを受けて、金子さんまで一緒に批判されて、ものすごく深刻な問題をふたりで支え合って乗り越えられたんだな、と。日本中の人からのバッシングが集中するのは精神的にも厳しいものがありますよね。

――コミュニケーションの取り方で、心に残っている夫婦は?

 夫は遅くまで働いていて、妻はワンオペで大変なんだけど、自分の意見をいうのがすごく苦手な女性の話は心に残りました。私は自分の意見を言う方なので、言えない人の気持ちが分からなかった。でも、話を聞いてみると、自分が言うことで、相手を傷つけたり、問題を複雑にさせたりしてしまうかもしれない。だったら、自分さえ我慢すればまるくおさまるんじゃないかなと考えているんだ、とわかりました。「自分の気持ちを言わないのはダメ」と正論で断罪することは簡単だけど、それでは何も解決しないんですよね。何故言えないのか?どうしたら言いやすい環境になるのだろう?を考えないといけない。

デリケートな悩みを共有するために

――不妊治療やセックスレスなどは、夫婦で話しづらいセンシティブな話題だと思います。ちゃんと伝えるには、どうすればいいでしょうか。

 本来は、伝えることが得意な方がヒアリングするのがいちばんいいと思います。でもそれが難しいから、齟齬が生まれる。やっぱり勇気が必要だったり、喋ることでより面倒臭くなったり、こじれてしまうことが怖いんだと思います。どうせ話しても通じない、諦めもあるかもしれません。でも話さなければ悪くなる一方で。虫歯のようなものかなと思います。歯医者に行くのが怖くて放置している間にどんどん虫歯は大きくなり、最終的には歯を抜くことになる。「相手のためにも」本音は言った方が良いことが多くあります。

 自分の言葉だけでは不安な場合は、例えば、不妊治療だったら、不妊治療に関する記事をシェアしてみる。他人が代弁した言葉を読んでもらう。そういう他の人の力を借りるのもいいと思います。

――犬山さんも、夫にシェアしていますか?

 私は、子どもを欲しいかどうかを悩んだときから夫に相談していて、生理のことも付き合いたての頃にすごく話して、妊娠中のときも、女性の身体の仕組みやつわりのことがわかるように本を渡して知識をつけてもらいました。分からないといたわりようがない。本当は優しい気持ちがあるんだけど、知らないとなかなかできない。だから、お互い知識をつけていくのは大事ですよね。ただ、私の場合夫がそういうことを素直に受け取る人だったというのも大きいと思います。

――関係をこじらせたり喧嘩したりすることは、ネガティブな印象があります。意見が違うことがポジティブに転換できたら、もう少しうまく話し合えると思うんですが……。

 伝えたいのは、夫婦それぞれが、どういう話し合いの仕方をすれば、冷静にお互いのことを「味方」だと認識しながら、喋れるのか。問題点を俯瞰で捉えて、解決にむけて、やっていけるのかを夫婦でまず話し合ってみること。

 ルールや基礎ができてない話し合いでは、解決する問題が全然解決しない。最初にコストをかけて建設的な話し合いの仕方を決めることが必要だと思います。

――話し合いのルール、具体的にどんな例があるでしょうか。

 例えば、問題があったときは、お互いファクト(事実)を出し合う、でもいいと思います。感情的になったときは、怒りも大切な感情だと思うから怒るのはいいんですが、話し合いの場は、お互いに冷静でいる、とか。怒りがガガガーって出てしまったら、いったん中止する、とか。

 私と夫の場合、私が9で夫が1しか喋らないから、私が夫に「どう思う?」ってヒアリングします。すぐに意見が出てこないときも「黙ってないで何か言ってよ」とかは絶対に言わない。「今は考え中ね。じゃあ後で」みたいな感じですね。何度か積み重ねていくとブラッシュアップされて、どんな問題が起きても使えるルールになっていくと思います。

夫婦に訪れた「事件」どうリカバリーした?

――昨年、パートナーの劔さんが新幹線で誘拐犯に間違われて通報されたことは、SNSでも大きな話題になりました。大変ショックだったと思いますが、家庭内ではどうリカバリーされたのでしょうか。

 夫は自らSOS出すタイプではないので、私が気を張らなきゃいけないな、と思っていました。夫もトラウマというか「また、ああなっちゃうのか」と少し思っちゃうところがあったので、いかに夫の心の傷を癒すかを考えていましたね。

 家族3人で出かけて、娘のイヤイヤが出てきたときに、2人で笑いながら対応することで、娘のイヤイヤ=トラウマではなくて、イヤイヤは楽しいときもあるねと思えるような、そんな印象操作というか成功体験をちょっと意識しました。私が勝手にやったことですけどね。

 あとは、そのことばかり考えていてもつらくなるので、夫は(女性アイドルの)ハロー!プロジェクトが大好きなので、夫のオタク仲間がワーッとうちに遊びに来て、みんなでハロプロの動画を観たりしました。夫はしんどいときも、私がリビングでハロプロの曲をかけると、踊りながら出てくるんですよ。ハロプロの曲には大いに助けられてます(笑)。

「結婚は人生の聖域でも、墓場でもある」

――「結婚は人生の聖域でもあり墓場でもある」と、あとがきに書かれていました。リカバリーしていくことを前提としたうえで、「やっぱり違った」ときの選択肢として、別れや離婚を心に持って話し合いに臨むのはアリでしょうか。

 大切なのは、自分の人生をどう生きるか、だと思うんですよね。離婚した方が、自分もすごくポジティブに生きられそう、と思うのなら、それはもうポジティブな決断。パートナが嫌でイライラしてしまって子どもにつらく当たってしまう環境よりは、親がニコニコしながら人生ってやり直しもできるし楽しいよねって姿を見せる方が、子どもにとっても大事だと思います。離れることは、ひとつのポジティブな選択肢だと思います。

 話が通じない人、言うことを聞いておけばいいって人と向き合うのは、自分の自尊心が削られて、精神的なDVを受けるかたちになってしまう……。そうなると、仕事をするのも大変になって逆に(金銭的に)離れられなくなってしまうリスクもあります。自尊心が傷付いてないか、相手は言葉を尽しても話を聞かない人なのかチェックしてほしいですね。本にも、離れるべき相手のチェックリストを入れたので参考にしてもらえたらと思います。

――最後に、パートナーとの関係に悩みを抱えている人たちにメッセージを。

 お互い、何でああしないんだろうって考えると「敵対」してしまうんですが、最初に同じ方向を向く作業が、この本で伝えていることです。

 問題は依然としてあるんですよ。でも向きを同じにすることで、2人で一気に解決に向かえる。家事がどちらかに偏っていたとしたら、「家事の山をどうしたらお互いストレスなく乗り越えられるか」って2人の問題になる。だから夫も妻も、両方に読んでもらえたら嬉しいなと思います。