第163回芥川龍之介賞・直木三十五賞(日本文学振興会主催)の選考会が7月15日、東京・築地の「新喜楽」で開かれ、芥川賞は高山羽根子さん「首里の馬」(新潮3月号)と遠野遥「破局」(文芸夏季号)、直木賞は馳星周さん『少年と犬』(文芸春秋)に決まりました。
【芥川賞】高山羽根子さん「首里の馬」
高山さんは1975年、富山市生まれ、東京都在住。多摩美術大学美術学部絵画学科卒。2010年「うどん キツネつきの」が創元SF短編賞の佳作に選ばれ、デビュー。16年「太陽の側の島」で林芙美子文学賞。芥川賞は18年「居た場所」、19年「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」に続き、3度目の候補だった。
受賞作は、沖縄で私設民俗資料館の整理を手伝いながら、遠方の登録者にウェブカメラを使ってクイズを出す仕事をしている女性が主人公。台風が去った日に自宅の庭に現れた沖縄在来の「宮古馬」との出会いや資料館の存続危機を描く。
【芥川賞】遠野遥さん「破局」
遠野さんは1991年、神奈川県藤沢市生まれ、東京都在住。慶応義塾大学法学部卒。2019年、女装をする青年を描く「改良」で文芸賞を受賞しデビュー。芥川賞の候補入りは初めて。
受賞作は、公務員を目指しながら母校の高校ラグビー部を指導する大学4年生の「私」が主人公。コーチとして後輩をきびしい練習に追い込む姿や、2人の女性との恋愛と破局を感情の冷え切った文体でつづる。
【直木賞】馳星周さん『少年と犬』
馳さんは1965年、北海道生まれ、長野・軽井沢在住。書評家などを経て96年、「不夜城」でデビュー、ベストセラーとなった。日本推理作家協会賞を受けた「鎮魂歌 不夜城Ⅱ」など、ヤクザ、中国マフィアなど暗黒社会を描く「ノワール小説」で知られるほか、愛犬との最後の日々をつづったノンフィクションや山岳小説など幅広く手がけている。直木賞候補になるのは今回が7回目。
受賞作は、東日本大震災で被災した家族に飼われていた犬が、日本を南下しながら出会った人間たちとふれあう連作短編集。人の愚かさゆえの切なさ、言葉の通じない犬ならではの濃密な交流を丁寧に描いた。
>馳星周さんが、犬と人との絆を描いた「雨降る森の犬」インタビューはこちら
他の芥川賞候補作はこちら
・石原燃「赤い砂を蹴る」(文学界6月号)
・岡本学「アウア・エイジ(Our Age)」(群像2月号)
・三木三奈「アキちゃん」(文学界5月号)
他の直木賞候補作はこちら
・伊吹有喜「雲を紡(つむ)ぐ」(文芸春秋)
・今村翔吾「じんかん」(講談社)
・澤田瞳子「能楽ものがたり 稚児桜(ちござくら)」(淡交社)
・遠田潤子「銀花の蔵」(新潮社)