「ウィズコロナ」「アフターコロナ」と言われる時代をどう生き抜くか。様々な論客が持論を展開する中、『ユダヤ人大富豪の教え』など著作のファンも多い本田健氏は、冒頭、これからの時代を仕事どころか「業界全体が消滅してしまう時代」と言い切る。
しかし、決して悲観ではない。世界規模で生活様式や業界構造が根底から変わる「強制リセット」ボタンが押された今は、誰もが「『天職』を探す旅」に出られるチャンスなのだと背中を押す。その旅路の歩き方についても、自身の20代からの経験も交えながら、平易な言葉でガイドする。
助言の大半は、心の持ち方についてのもの。資産や能力など特別な何かを備えよとは言わず、「決断」で重要なのは「決める」よりも「断つ」こと、「創造」の前に「想像」と思考の転換を促す。消滅の先に何を生むかは自分次第なのだと気づかされる。
米国の富豪たちにインタビューを重ねてきた著者が、裕福とは言えないブータン人の言葉を挙げたのが印象的だった。将来に不安はなく、「病気になったら家族や近所の人、国が助けてくれます」。遠慮せず、頼り合う。これこそがきっと、どんな時代もタフに生き抜く黄金則なのだろう。=朝日新聞2020年9月5日掲載