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コロナ禍でおうち料理ブーム?「料理レシピ本大賞」栄冠は人気YouTuberに 授賞式リポート

大賞2作は人気YouTuber

 2014年から始まった「料理レシピ本大賞 in Japan」も今年で7回目。書店員有志を中心とした実行委員会によって運営され、今年は出版社から全123点がエントリー。全国の書店員の「書店選考委員」237人と、料理専門家たちの「特別選考委員」が、一般の人の作りやすさ、おいしさ、健康面などに加え、日本の食文化に貢献しうるかなどを重視して、投票などで選考しました。

 新型コロナ対策のため、今年の授賞式は初めて、朝日新聞東京本社からYouTubeやZoomでオンラインで動画中継され、リモートで参加する受賞者も。第1回から賞のアンバサダーを務めるお笑いコンビ「キャイ~ン」の天野ひろゆきさんは、アクリル板にはさまれながらおなじみのポーズを決め、表彰状も直接手渡さずに読み上げるセレモニーとなりました。

 最高峰の「大賞」に輝いた2作は、いずれも人気YouTuberのレシピ本でした。

 「料理部門」の大賞は、リュウジさんの『ひと口で人間をダメにするウマさ! リュウジ式 悪魔のレシピ』(ライツ社)。レンジでチンするだけの「半熟カマンベールカルボナーラ」、エビの下処理を省略する「エビシューマイ・チリ」など、簡単で本格的、しかもやみつきになる全116品の作り方が、キャッチ―なタイトルとともに紹介されています。その中の1品で、水を一切加えずに白菜の水分で煮込み、酒で味を調えた「無水白菜カレー」は、白菜と酒のうまみがスパイシーなカレールーと溶け合った絶妙なうまさ。

 YouTubeチャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」の登録者は約110万人。授賞式でリュウジさんは「本当に光栄に思っています。私の目標はたった一つ。自炊の楽しさ、すばらしさを世の中に知っていただくこと。この本がさらに皆様の手に渡って、料理の楽しさ、すばらしさに触れていただければと思います」とスピーチしました。

 「お菓子部門」大賞は、YouTubeチャンネル登録者約55万人のてぬキッチンさんの『材料2つから作れる! 魔法のてぬきおやつ』(ワニブックス)。「材料2つのアイス」「焼き時間3分のクッキー」など、手軽で美味しいお菓子73品は、YouTubeで人気を集めたレシピです。会場で提供されたチョコプリンも、チョコレートと牛乳と粉ゼラチンを鍋で煮溶かして冷蔵庫で冷やしただけ。試食した天野さんは一口食べて至福の表情。

 仮面で授賞式に臨んだてぬキッチンさんは「私は料理が大好きですが、めんどくさいことが大嫌い。できるだけ手を抜いて楽をして、美味しく作れるレシピをYouTubeで発信しています。初の著書。とにかく手に取っていただいた方に残念な気持ちになってほしくない、その一心で試作を重ねました」と、本が出るまでの苦労を振り返りました。

シンプルに、本格的に、見栄えよく

 料理部門の準大賞には、藤井恵さんの『藤井弁当』(学研プラス)が選ばれました。おかずは3品、主菜は焼くだけでもいいなど、毎日無理なく段取りよく作るためのコツや、見栄えする詰め方などの知恵が満載。弁当作りはずっと苦痛だったという藤井さんは「15年間、子どもたちが幼稚園から高校卒業まで毎日、お弁当を作っていた。どうにかして、無駄なことをしないで、時間を短く、だけど家のご飯を持って行かせたい。材料も道具も調味料も少ない、そぎ落とされた、なるべく簡単にできるお弁当と思ってこの1冊になりました」。

 お菓子部門の準大賞は、「伝説の家政婦」とテレビで話題になった志麻さんの『志麻さんの気軽に作れる極上おやつ』(マガジンハウス)。プリンやケーキ、フランス家庭で作られるクレープやタルトまで、本格的な味を手軽に作れるよう追求しています。志麻さんは「私の第2のふるさとフランスでは、アニメや絵本に、子どもが一人でお菓子を作っているシーンがすごくよく出てきます。大きくなって性別や年齢問わず、本当に料理作りが好きで、食べることを楽しんでいる。そんなフランス人が大好きで、フランス料理を勉強してきました。それを形にしてくださった皆様、手にとってくださった読者の皆様に感謝しています。」。

 料理専門家の特別選考委員が1次審査通過作の中から選んだ「特別選考委員賞」は、若山曜子さんの『フライパン煮込み』(主婦と生活社)に贈られました。フランス留学経験のある料理研究家の若山さんは「いちばん身近な調理道具のフライパンを使って、日頃よく作る我が家の料理を、5~15分ふたをして煮込むだけでできるように、シンプルにしたレシピたちです。フライパンで煮込む料理は、フランス人には日常の飾らない調理法なのですが、できあがる料理は実はどれもごはんによく合うものです。季節やその日の気分、冷蔵庫のストックに合わせて、気軽にトライしてもらえればと思います」とコメントしました。

「日本の食文化が変わり始めている」

 その他の受賞作は以下の通りです。

■料理部門・入賞

『syunkonカフェごはん レンジでもっと!絶品レシピ』(山本ゆり、宝島社)
『朝10分でできる スープ弁当』(有賀薫、マガジンハウス)
『力尽きレシピ』(犬飼つな、光文社)

■こどもの本賞

『おにぎり』(文・平山英三 絵・平山和子、福音館書店)

■エッセイ賞

『頑張らない台所~60歳からはラクしておいしい』(村上祥子、大和書房)

■コミック賞

『私でもスパイスカレー作れました!』(こいしゆうか・印度カリー子、サンクチュアリ出版)

 『私でもスパイスカレー作れました!』は、使うスパイス3つだけ、基本炒めるだけ、最短20分でできる本格スパイスカレーの作り方を、大学院生の傍らスパイス料理の研究・普及活動を続ける印度カリー子さんが、イラストレーター、こいしゆうかさんにレクチャーする、ほのぼのとした画風の漫画。

 こいしさんは「私は料理が得意ではないタイプですが、本当のおいしさと、すごい自由に楽しくできるんだなってことを教えてもらって。『私でもスパイスカレー作れたんだよ』と伝えたくて書いたので、とてもうれしく思います」、印度カリー子さんは「スパイスカレーは体に優しくて、具材もそんなに必要なく、煮込まなくていい。この本が日本を代表するような賞を取ったということは、日本の食文化が変わりはじめていると見て取れます。ぜひ先進的なカレーをご自宅でお楽しみいただければと思います」と笑顔で喜びを語りました。

 『朝10分でできる スープ弁当』は、忙しい朝の時間、10分で仕込み、余熱の保温調理で昼までに煮込まれるスープジャーを活用したお弁当レシピ集。2回目の入賞となったスープ作家の有賀さんは「小鍋で野菜と肉をさっと煮て、スープジャーに入れてふたをしておくと、お昼までに美味しいスープができている。簡単さはもちろん、ふたを開けたときのお弁当の楽しみ、わくわく感を感じられると思います。忙しいお母さんを助けてくれるライフスタイルを提案できたことが人気の秘密では」と話しました。

 『頑張らない台所~60歳からはラクしておいしい』は、人気料理研究家の村上さんが70代後半を迎え、食べるのも作るのもおっくうになる世代に向けたレシピ本。「味噌汁は冷凍で野菜を切って袋に入れて、マグカップに入れて水と味噌を入れ、電子レンジでチンとすればできあがり」といった一人暮らし高齢者へのアドバイスが詰まっています。オンラインで授賞式に参加した村上さんは「今や私も後期高齢者のおひとりさま。ちゃんと食べて元気よく生きていくための、日常のあるがままをつづったものです。これからも心してまっすぐ前に進んでいきたいと思っています」と抱負を語りました。

かゆいところに手が届く工夫も

 『syunkonカフェごはん レンジでもっと!絶品レシピ』は、人気料理ブロガーの山本さんが「読み物として楽しめる、ちょっとふざけた料理本」をコンセプトにしたシリーズ9作目。レシピの材料を量が多い順ではなく、粉類、液体、油類と使う順に並べ替えて書くことで、洗い物も減るなどの細やかな工夫が凝らされています。「このシリーズで初めて受賞することができ、本当にありがたくうれしく思っています。これからも使う人の立場に立った、かゆいところに手が届く本をつくっていきたいです」と、山本さんは喜びのコメントを寄せました。

 『力尽きレシピ』は、レシピをその日の残り体力に合わせて4段階に分類し、チューブやカット野菜などもフル活用して、疲れ切った夜でも手作りできる料理を提案しています。犬飼さんは「ジャガイモの皮むきすら面倒な専業主婦がこのような賞をいただけるなんて、人生わからないものだなあと驚いています。これからもしんどいけど料理しなきゃという人の助けになれるような、料理と呼べるのかぎりぎりのレシピを作っていきたい」とコメントしました。

 『おにぎり』は、1992年に初版が発行されたロングセラーの絵本。夫の平山英三さんが文、妻の和子さんが絵を担当し、おにぎりができるまでをシンプルに力強いタッチで描いた作品ですが、英三さんは今年6月に亡くなりました。和子さんは「とてもうれしいです。絵本は長い間出ていることが、よい絵本の証しの一つ。長年読み継がれ、今でも子どもたちに愛されている『おにぎり』が賞を頂くことができ、ありがとうございました」とコメントを寄せました。

料理を始めるきっかけとして

 ネットで料理レシピが手軽に検索できる時代でも「レシピ本」の売れ行きは好調。特に新型コロナの拡大で気軽に外食が難しくなり、「普段料理しない人が料理をはじめるきっかけとして、非常に売れています」(加藤勤・実行委員会委員長)。第1回からアンバサダーを務める天野さんは、「コロナ禍の状況で、料理を自宅で作るのが増えた。時間もあって普段作らない料理に挑戦する人がいたり。かといって回数が1日3食になってくると大変なんで『簡単により美味しく』という料理がもてはやされた」と講評しました。

 こちらで紹介した受賞作品が一堂に会するフェアを全国の書店で開催中。「第7回 料理レシピ本大賞 in Japan2020」の受賞帯がついた作品を店頭で購入すると、図書カードNEXTネットギフト1000円分が抽選で200人に当たります。応募の締め切りは10月31日まで。ステイホームの間も料理になかなか踏み切れなかった方、この機会にぜひ、レシピ本を手にとって、始めてみてください。