雷よけの「くわばら くわばら」、地震をしずめる「まじゃらく まじゃらく」。不安なときや怖いときに、人々が唱えてきた七つのおまじないを紹介した絵本「つるかめ つるかめ」(あすなろ書房)が8月に出版された。文を手がけた作家の中脇初枝さんは「不安を抱えている子どもや大人、無理をして頑張りすぎている人に届けたい」と話す。
コロナ禍で社会に不安が広がるなか、「物書きとしてできることはないか」と考えた中脇さん。おまじないを紹介する絵本を思い立ち、イラストレーターのあずみ虫(むし)さんとあすなろ書房も賛同。わずか2カ月の速さで出版に至った。
病気よけ、縁起直しなど、日本各地に伝わってきたおまじないを唱える場面が、短い言葉でテンポよく続く。最後に出てくるのは、中脇さんも小さい頃から周りの大人たちにかけてもらったという「だいじょうぶ」の言葉。誰もが自分を重ねて「だいじょうぶ」と思えるよう、添えた子どもの絵は、性別を限定しないように描いてもらった。
「おまじないは現状を変えてくれるわけではないけれど、私たちに寄り添い、勇気づけてくれる。唱えようとするときには『いま自分は怖いんだな』と気付くことができる。自分の心と向き合い、自分をいたわってあげてほしい」(松本紗知)=朝日新聞2020年9月26日掲載