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「全国学力テストはなぜ失敗したのか」書評 実態把握へ精度を高める設計を

評者: 本田由紀 / 朝⽇新聞掲載:2020年11月21日
全国学力テストはなぜ失敗したのか 学力調査を科学する 著者:川口 俊明 出版社:岩波書店 ジャンル:教育・学習参考書

ISBN: 9784000614191
発売⽇: 2020/09/08
サイズ: 19cm/184p

全国学力テストは失敗している! 注目されるのは順位ばかり、テストの設計が中途半端、分析や活用が不十分…。学力調査の専門家が全国学力テストの問題点をわかりやすく説明し、望ま…

全国学力テストはなぜ失敗したのか [著]川口俊明

 「全国学力テスト」(正式名称は「全国学力・学習状況調査」)は、2007年以降、文部科学省により全国すべての公立の小学6年生と中学3年生に対して実施されてきた(今年は新型コロナの流行により中止)。
 毎回の結果、都道府県別の成績順位をメディアが報道して関係者が一喜一憂する。大阪府をはじめ、市町村別や学校別の成績開示が行われたり、結果を内申点や教員評価に結びつけようとしたりする動きも現れた。その結果、成績を上げるための不正行為までが生じてきたのである。
 著者は、そうした混乱に加えて、全国学力テストの設計そのものが「失敗」であったとする。どのような「学力」を測ろうとしているのか不明、変化の把握もできない、児童生徒の背景情報が十分に調査されていないので「学力」を左右する要因の分析も難しい、結果が明らかになるまで数カ月かかる……等々。
 この調査の目的とされているのは、「指導」と「政策」に活(い)かすことだが、全国学力テストはどちらの目的も果たせていない、と著者は指摘する。「現行の全国学力テストが本当に求めているのは、文科省の考えを忖度(そんたく)し行動する力なのかもしれません」。嗚呼(ああ)。
 実態を把握する「調査」としての精度を高めるためには、難易度の異なる大量の問題ストックの中から出題し、児童生徒が解答する問題が異なっても統計的に「学力」を推定できる「項目反応理論」の適用や、私立学校も含めた代表性のある調査対象の抽出、生活習慣など綿密な背景情報、経年で変化が追えるような設計などが不可欠だ。
 もっとも深刻な問題は、文科省も、教育委員会も教員も、そして日本社会全般が、「学力」調査の実施と分析のための専門性、もしくはそれに対する敬意を欠いていることだ。膨大な費用と負担を投入して茶番が繰り返されていることに対して、暗澹(あんたん)とした気持ちになる。
    ◇
 かわぐち・としあき 1980年生まれ。福岡教育大准教授(教育学、教育社会学)。共著『日本と世界の学力格差』など。