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熊倉献「ブランクスペース」 想像を実体化、純度の高い文学的SF

 ナイフみたいに尖(とが)ってたりする思春期に「学校に隕石(いんせき)とか落ちないかなー」と考えたことのある人は多いだろう。想像するだけなら問題ない。しかし、もし想像したものを実体化できる力を持っていたら――というのが本作だ。

 のんきな高校生・狛江ショーコは、ある雨の日に、見えない傘を差す同級生・片桐スイに遭遇する。内向的でクラスでも目立たない存在のスイは、前述の不思議な能力の持ち主だった。ただし、実体化したものは透明で、何でも作れるわけではなく〈頭の中で仕組みがわかって組み立てられるものだけ〉という。

 大いに興味をそそられたショーコは、半ば強引に友達になる。勉強も恋愛も正反対の志向の2人だが、なぜか気が合った。しかし進級で別のクラスになってから、スイの様子がおかしくなり……。

 そこにあるのに見えないスイの産出物は、彼女の感情そのものだ。それをショーコは持ち前の想像力で“見る”ことができる。思い詰めたスイが作ろうとしたものは? ショーコのまっすぐさはスイを救えるのか? 意表を突く展開に心拍数が上がる。シンプルな描線とコマ割りに巧妙な構図とカメラワーク。純度の高い文学的SFの誕生だ。=朝日新聞2021年2月6日掲載

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