青色ひよこ「彼岸花」 「ろくでなし」たちに乾杯&完敗
まず値段(右記)に驚かれるかもしれないが、現物を見たら分厚さに驚くだろう。35ミリ、400ページ超。書名と著者名はその分厚い背表紙に記され、表側には白黒のイラストとアメリカで未成年に不適切な表現を含む音楽作品に貼られるという「親への勧告:露骨な内容」のラベルがあるだけだ。
見るからに異形の存在感を放つ単行本。ページを開くとさらに驚く。表紙同様ハーフトーンを一切使わない白黒のコントラスト強烈な画面。めまぐるしく切り替わる視点。それでいてディテール描写は濃密でリアルときた。
高校の同級生女子3人で組んだパンクバンド「彼岸花」の元ベースで現在は主婦のキョンシーと元ドラムで派遣労働者のモーリンは、22歳で死んだボーカル&ギターの愛の残像に囚(とら)われている。そこに別のバンドの元ギタリストでキョンシーの夫ヒロシ、バンド仲間のトモを加えた4人の複雑に絡まり合った“愛”の物語が、ダブルミーニング満載のリリックで綴(つづ)られる。
「生きてるうちに花開く悲願/役立たずのまま狂い酒/実にならずとも狂い咲け」とはキョンシー作詞の歌の一節。自傷的言動は痛々しくもあるが、魂の置き場所を探す〈ろくでなし(パンクス)〉たちの悪あがきに乾杯&完敗だ。=朝日新聞2026年2月7日掲載